政府は南シナ海に浮かぶ南沙諸島(スプラトリー諸島)最大の島、太平島を世界の人道的な救助センターに建設するため、先ごろ緊急救助の際に航空機内で使用する生命維持システムを購入、南シナ海における台湾の国際的な救助・医療能力を高めた。
行政院海岸巡防署(日本の海上保安庁に相当)によれば、海上もしくは島で重傷を負うなどした人の救助が必要な場合、まず太平島の病院で応急処置を行う。また、今年6月26日に太平島で正式に使用が開始された4G(第四世代)移動通信ネットワークを利用し、収集した証拠映像を航空行政機関に素早く送って事故原因の調査を助ける。そして最後に空軍が救護用航空機を派遣、生命維持システムも準備して太平島から患者を台湾本島に搬送、本格的な治療を受けさせる。
この生命維持システムを航空機に搭載するのに必要な時間は約30分。台湾を出発後、患者を太平島から台湾に搬送するには約3時間半。生命維持のための設備はシリンジポンプ、電源切替機、心電図モニター、DC(直流除細動器)、人工呼吸器など。
太平島には軍関係者も派遣されており、彼らに医療のニーズがある。また、南シナ海は国際的な航路である他、台湾の医療水準は南アジア諸国をリードする地位にある。台湾が台湾本島への搬送能力を備えている中、「救助に国境はない」との考えに基づき、台湾は国際的な救助活動に協力する。また、それにより、台湾には医療面で国際的な責任を果たす力があることを世界に示すという。
2000年に行政院海岸巡防署が東沙諸島、南沙諸島に人員を駐在させて警備にあたるようになって以降、南シナ海で執行した救助活動は74件で、救助対象は延べ104人に上る。そのうち南沙諸島海域では27件、延べ29人。救助したのは船員や太平島の人々などで、中華民国(台湾)の国民と外国人がほぼ半々だという。
海岸巡防署は今後も南シナ海における救助活動の訓練を継続する他、周辺諸国との協力メカニズムも強化し、太平島が南シナ海における人道的な救助センター、並びに補給基地としての役割を十分に果たせるよう努力していく考え。