2025/04/28

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まさに竜宮城、太平島周辺で新種90種を確認

2018/04/23
農業委員会漁業署は、台湾の最高学術研究機関である中央研究院の研究チームに委託し、南シナ海に浮かぶ南沙諸島(スプラトリー諸島)最大の島であり、中華民国(台湾)固有の領土である太平島の周辺水域で、1年間にわたって調査・研究活動を進めてきた。研究チームは今回、太平島の周辺水域で新種90種を確認した。内訳は大型の無脊椎動物9種、藻類35種、珊瑚46種。(漁業署提供、中央社)
農業委員会漁業署(日本の水産庁に相当)は、台湾の最高学術研究機関である中央研究院の研究チームに委託し、南シナ海に浮かぶ南沙諸島(スプラトリー諸島)最大の島であり、中華民国(台湾)固有の領土である太平島の周辺水域で、1年間にわたって調査・研究活動を進めてきた。その結果、同水域のサンゴ礁の生態環境が非常に豊富かつ健康的であり、南沙諸島における生物多様性の「ホットスポット」と呼ぶにふさわしく、その美しさはまるで海底に存在する「竜宮城」のようであることが分かった。
 
地球のことを考えて行動する日「アースデイ(地球の日)」となった22日、漁業署は太平島周辺水域の生態系をまとめたドキュメンタリーフィルム『南疆太平之舞』を初公開した。全編18分間という短いこの動画は、プロの水中撮影チームが撮影したもの。太平島の周辺水域の美しさを伝える写真の数々も展示された。
 
漁業署は昨年、太平島周辺水域の生物資源の状況を理解するため、中央研究院生物多様性研究センターの鄭明修研究員が率いる研究チームに委託し、「南沙諸島における海洋生物(動植物)の資源調査及び生態系サービス評価計画」をスタートさせた。鄭明修研究員ら研究チームは巡視船や漁業訓練船に乗り込み太平島を訪問。兵士らが育てる野菜10種余りや淡水井戸などを頼りに、2か月以上にわたり島に滞在した。
 
研究チームによると、太平島は南シナ海の南沙諸島北部にある環礁「鄭和群礁(ティザード堆)」に属する。これは、南シナ海のサンゴ礁の生態系にとって最も重要な環礁の一つ。南シナ海の生物は、潮流に乗って太平島から北へ向かい、途中でフィリピンまたはベトナムを経て、東沙諸島(プラタス諸島)で合流する。そこからさらに北上し、小琉球(台湾南部・屏東県の離島)や台湾本島、澎湖諸島などへと流れて行く。このため、太平島周辺水域は台湾の沖合漁業にとって「最大の種子貯蔵庫」とも言える。
 
南沙諸島に分布する海底生物の多くは、かつて台湾の周辺水域でも出没していた。しかし近年、海底生物を取り巻く環境が急速に変化したことにより、これらを台湾の周辺水域で確認することはほとんどなくなった。研究チームは今回、太平島の周辺水域で新種90種を確認した。内訳は大型の無脊椎動物9種、藻類35種、珊瑚46種。
 
太平島のサンゴ礁は主に石珊瑚で構成されている。国際基準に基づけば、「優」や「特優」などに格付けされる状態。また、直径5㎝以下のサンゴ群体の多様性が高いのが特徴だ。これは太平島が、わが国の領海では極めて珍しい、高い生態系レジリエンスの潜在力を持ったサンゴ礁で、スズメダイ科やベラ科の小さい魚を多くひきつけていることを意味する。
 
調査チームはまた、絶滅危惧種とされ、台湾では30匹にも満たないナポレオンフフィッシュを、今回の太平島の調査で5匹も目にしたという。
 
漁業署の黄鴻燕署長によると、昨年はこの計画に1,000万台湾元(約3,600万日本円)余りを投入した。海洋生物の情報を収集することが目的だったが、太平島の周辺水域を保護区に制定するかどうかについては、「これまでもそのような提案があったが、太平島の地理環境は政治的にも敏感な場所にあるため、保護区に制定するかどうかについてはさらなる検討が必要だ」と述べるにとどまった。
 

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