2025/06/08

Taiwan Today

外交

3年半の努力を評価、台湾に対する違法操業「イエローカード」警告をEUが解除

2019/06/28
EU(欧州連合)の政策執行機関・欧州委員会が27日、台湾漁船のIUU漁業(違法操業・無報告・無規制)に対する中華民国政府の対策が不十分だとした「イエローカード」警告を解除した。写真は解除を喜ぶ関係者。前列左から5人目が行政院農業委員会の陳吉仲主任委員(大臣)。4人目はEUの駐中華民国大使に相当する、欧州経貿弁事処(EETO)のMadeleine Majorenko処長。(中央社)
EU(欧州連合)の政策執行機関・欧州委員会が27日にプレスリリースを発表し、台湾漁船のIUU漁業(違法操業・無報告・無規制)に対する中華民国政府の対策が不十分だとした「イエローカード」警告を解除した。欧州委員会の環境・海事・漁業担当委員であるカルメヌ・ヴェッラ(Karmenu Vella)委員は、「台湾が漁業に関する法律の枠組みを改革し、新たな管理ツールを導入したこと、そして水産物(漁獲物)のトレーサビリティ(生産履歴の追跡)機能を改善したことを歓迎する」と述べた。
 
欧州委員会はこのプレスリリースの中で、2015年10月に「イエローカード」警告を出して台湾を「IUU漁業の取締りに協力しない対象」としてから、3年半にわたって台湾と集中的な協力と話し合いを重ねてきたと説明、台湾は今では現代的かつ効果的なツールでIUU漁業を取り締まるようになったと評価した。さらに欧州委員会は、台湾の遠洋漁業が世界で2番目に大きい規模であることを考えると、台湾の改善は非常に大きな進歩であり、台湾は世界の水産物のサプライチェーンにおいて中心的な役割を果たしていくだろうと期待した。欧州委員会はまた、台湾が、自らの漁船でありながら第三国の国旗を掲げて操業する台湾の業者に対する管理も強めたと指摘している。
 
国際組織が摘発したことで、台湾は2015年10月1日にEUから「イエローカード」警告を受けた。このことは台湾の1,000隻を超える遠洋漁船、並びに年間500億台湾元(約1,712億日本円)とされる生産額に打撃を与えた。台湾はこのためEUとのテレビ会議や書類のやりとりで改善に向けた話し合いと計画を進めてきた。EUの関係者は6カ月ごとに訪台、毎回4~5日間滞在して会合を開くと共に、抜き打ちで漁港を訪れては管理の実情を視察し、改善計画の進度を確認して回った。
 
行政院農業委員会漁業署(日本の水産庁に相当)によれば、EUと国際組織は台湾の遠洋漁船による深刻なルール違反の原因は法律の執行が不十分であることと罰則が軽すぎることによるものだと見ていた。このため改善のための具体的な取り組みとして法整備を行うことにし、政府は産業界とのコミュニケーションに努め、公聴会を開催するなどして漁業に関する三つの法案を立法院(国会)に提出した。
 
これら法案は「遠洋漁業条例案」、「非中華民国船籍漁船に対する投資・経営の管理条例改正案」、「漁業法一部改正案」といういわゆる「遠洋漁業三法」のほか、関連の法規・規則・基準など15の法案で2016年7月5日に立法院で可決・成立、総統府が同年7月20日に公布した。そして6カ月後の2017年1月20日に施行され、重大な違反に科される罰金は200万台湾元(約685万日本円)以上、3,000万台湾元(約1億274万日本円)以下となった。
 
これら法律が速やかに制定及び改正されると、これに基づく実際の取り締まりもただちに始まり、法律がしっかりと執行されるようになった。漁業署の統計データによると、2017年1月20日にこれらの法律が施行されて以来、2018年10月上旬までに実際に罰金処分となった漁船は90隻、罰金額は合わせて1億1,618万台湾元(約3億9,790億日本円)だった。年度で見た場合、2017年に処罰された漁船は65隻、罰金額は7,869万台湾元(約2億6,950万日本円)だったのに対し、2018年は10月上旬までで同25隻、同3,749万台湾元(約1億2,840万日本円)にいずれも大きく減少するなど、違反状況の改善が続いているという。
 
一方、台湾は世界のIUU漁業摘発にも協力。2017年夏には漁業署が当時の行政院海岸巡防署(現・海洋委員会海巡署。日本の海上保安庁に相当)と共に高雄市(台湾南部)の沖合いでホンジュラス船籍の輸送船に立ち入り検査を行い、IUU漁業による漁獲物の市場流入を防いだことで称えられた。
 
漁業署では国際協力を徹底するため、120名近いオブザーバーに立ち入り検査を要請している。台湾の遠洋漁船が水揚げ(荷卸し)する32カ所の漁港では、それに立ち会う検査員を18名設置。マーシャル諸島、南アフリカ、フィジー、パラオ、米国領サモアにも各1名の常駐検査員を置き、また漁業署の公務員も南アフリカとモーリシャスに各1名派遣されている。モーリシャスではさらに1名検査員が増える予定。漁業署の林国平副署長は、過去3年あまり、法整備と法律の執行、違反行為の監視と予防、国際協力へと絶えず取り組んできた成果は明らかであり、こうした努力がEUの「イエローカード」警告解除につながったと説明している。
 
EUの駐中華民国大使に相当する、欧州経貿弁事処(EETO)のMadeleine Majorenko処長はプレスリリースの中で、「台湾がこれまで漁業に関する法律全体の改善と管理系統の強化に取り組む姿を自分は見てきた。EUは今後も台湾を支持し、共同で不法な操業の取締りに努めていく」と話している。
 
 

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