カリブ海諸国を外遊中の蔡英文総統は現地時間17日午後、訪問先のセントルシアで、アレン・シャスネ(Allen Chastanet)首相とエゼキエル・ジョゼフ(Ezechiel Joseph)農林大臣と共に、輸出バナナ集貨センターでの作業を視察した。
セントルシアでは昨年と一昨年、天災に見舞われており、台湾の農業技術団が復興を支援してきた。セントルシアにおいてバナナは、輸出量がここ五年で最高となり、同国で最も輸出が多い農産品だ。さらにセントルシア経済を支える重要な農産物とされ、1万~2万人の国民の生活に影響を及ぼすという。
セントルシアに駐在する台湾農業技術団は、鄭仕隆団長を筆頭に5人のメンバーから成る。メンバーの年齢層は低いものの、学歴は高いのが特徴だ。
セントルシアは人口が約16万人、面積が620平方キロメートル(日本・淡路島とほぼ同じ)の島国だ。約2万人がバナナ栽培に従事している。鄭仕隆団長によると、セントルシアでは、ハリケーンが発生しただけで、バナナ農園がほぼ崩壊してしまう。そのため、バナナ農園の復興作業では、バナナ農家の人たちがスイカを栽培するのを支援し、収入源を増やすよう努めている。
セントルシアの環境は、乾燥と湿気が平均的でないため、栽培されるバナナは他の品種と比べて、短く小さい。この小ぶりなバナナは、英国の学校給食用のデザートは一人一本という規定を満たし、英国に輸出されている。鄭仕隆団長は、「 EU (欧州連合)によるバナナの関税優遇制度が廃止されて以降、セントルシアは、英国へのバナナ輸出ができなくなった。英国へ輸出するには、適正農業規範の国際的な基準を示す『グローバルギャップ(GGAP)』認証を取得しなければならなかった。そのため台湾農業技術団は、全力でセントルシアのバナナ農家が同認証を取得できるようサポートした」と説明した。
気候的な理由からバナナ栽培が不可能な英国からは、年間を通してセントルシアに対し、安定したバナナの需要が見込めた。台湾の農業技術団が支援してGGAP認証を取得した後、セントルシアのバナナ農家は、カリブ海地域へ1箱17東カリブ・ドル(約680日本円)で販売、輸出は1箱26東カリブ・ドル(約1,000日本円)で販売した。本来は192人だったバナナ農家も現在は300人を超え、英国へバナナを輸出している。
鄭仕隆団長は、台湾の農業技術団とセントルシアのバナナ農家は、「手足がたこだらけになるほど」苦労した結果、ここまでの成果をあげることができたと強調した。農業技術団は、台湾バナナの品種「台蕉二号」をセントルシアのバナナ農園に導入した。これは比較的低い木になる品種のため、ハリケーンが発生しても、木が倒れる確率はそれほど高くないという利点があり、気候変動に対する問題にも対応できるよう徐々に改善している。
エゼキエル・ジョゼフ農林大臣は、「台湾とセントルシアの緊密な協力関係があったため、2018年にハリケーンの被害にあったときでも、セントルシアのバナナの輸出量は過去5年で最高だった。セントルシア駐在の台湾農業技術団の支援のもと、セントルシアの農業分野における就業機会を増やし、農民の収益の安定、農園の経済発展を促進したい」との意気込みを語った。