チェコの首都プラハのズデニェク・フジブ(Zdeněk Hřib)市長は過去1年、台湾との交流を推進する中、自国内で様々な妨害にさらされてきた。チェコと中国大陸との関係にも問題が絶えなかったが、プラハ市議会はこのほど、台湾北部・台北市と姉妹都市提携を結ぶ提案を全会一致で承認した。
昨年末にプラハ市長に就任したズデニェク・フジブ氏は今年1月、前任の市長が中国大陸の北京市との間で結んでいた姉妹都市協定の一部を破棄すると宣言した。破棄したのは同協定内の、「1つの中国」政策ならびに「台湾は中国の不可分の領土である」という立場に関連する条項。フジブ市長はまた、プラハ市庁舎においてチベット亡命政府の指導者(首相)ロブサン・センゲ氏と自発的に面会してチェコのミロシュ・ゼマン大統領の進める「親中政策」に公然と反対、チェコと中国大陸との関係に衝撃を与えた。なお、フジブ氏が語っているところによると、同氏は学生時代に台湾で実習したことがあり、台湾にとても良い印象を持っているとのことで、自身を「台湾ファン」と呼んでいる。
近年、チェコの政治は右翼ポピュリズムが主導。ゼマン大統領とアンドレイ・バビシュ首相はいずれもビロード革命の残した精神的な遺産を受け継ぐ気は無く、ヴァーツラフ・ハヴェル元大統領の打ち出した人道主義と親欧路線には背を向けた状態だという。これに対し、プラハ市のフジブ市長は台湾に友好的でチベット人の人権も重視、自ら「人権はジャイアントパンダより重要だ」と主張して、北京市が姉妹都市となる際に約束しながら未だプラハ市に提供しないパンダを放棄しても人権の価値を堅持するとの立場を示している。
台湾に友好的な市長と「親中」大統領が舌戦を繰り広げていることはチェコのメディアも大きく取り上げており、多くのメディアが台湾に同情する立場を示しているほか、イギリスのガーディアン、米国のニューヨーク・タイムズ、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングなど海外主要メディアもこの問題に関心を寄せている。
ズデニェク・フジブ市長の計画によると、台北市との姉妹都市協定は来年1月に予定される台北市の柯文哲市長のプラハ訪問時に締結する。フジブ市長は今年3月に台北市を訪れた際、台北市に対してセンザンコウ(穿山甲)を寄贈してくれるようリクエストしており、欧州の人たちにとって非常に珍しい台湾のセンザンコウが、近々パンダの代わりにプラハの動物園で見られる日がやってくるかもしれないということ。