中華民国(台湾)と正式な外交関係を持つ国交樹立国で、西太平洋に位置するパラオ共和国は医療資源が乏しく、同国にある医療機関は病院1つ、診療所3つと小型のコミュニティ医療センターにとどまっている。こうした状況の中、台湾の新光呉火獅紀念医院(=病院、台湾北部・台北市。以下、新光病院)は2013年にパラオと転院協力に関する契約を交わしており、同病院ではこのほど、ここ数年間にパラオで行った医療支援と、パラオから台湾に受け入れた転院患者に関する物語を1冊の本にまとめて出版した。1月2日にはこの新刊書に関する記者会見が開かれた。
新光病院はパラオから海外への転院患者のうち70%を受け入れており、これまでに急を要する重い容体の患者延べ3,300人以上を治療してきた。平均すると毎日5人から7人のパラオ人患者が同病院で治療を受けているのだという。
今回出版された『跨海的守護者-新光医院扎根帛琉医療的故事(A Story of Brotherhood Between Shin Kong Hospital and Palau)』では、看護師のKADOILTELATKさんや自動車事故に遭ったパラオの水泳選手のNoel E. Keaneさんなど、台湾が転院を受け入れた多数のパラオ人患者に関するストーリーが記されている。KADOILTELATKさんは2日の記者会見で、新光病院に改めて感謝した。KADOILTELATKさんは、自分は看護師で日頃から健康には注意してきたがそれでも大病を患うことになったと説明、新光病院の治療とケアのおかげで健康を取り戻し、職場に戻れたと感謝した。
新光病院によると、パラオの持つ医療技術や設備では継続的な治療が出来ない患者は申請することで台湾の新光病院に転院して治療を受けることが出来る。費用の80%はパラオ現地の保険が支払い、患者自身は20%の負担で済む。新光病院の国際医療チームは毎年3回パラオを訪れている。院長の侯勝茂氏もすでに7回パラオを訪問、患者の術後の経過を確認すると共に、同病院で治療を受けた人たちを招いて交流会を開いている。
パラオから台湾に転院する患者に多い疾病は心血管疾患、骨折と外傷、そしてがんの3つ。心血管疾患の発生率が高いのはパラオの人たちの飲食習慣が肥満につながりやすいことと関係がある。新光病院ではこのため2015年にはパラオの学校に乗り込み、飲食に関する考え方の普及を推進、栄養士が給食メニューの改善に協力し、食事での野菜を増やすなど営養に関する観念を植え付けたという。