台湾では2009年12月10日に「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(二つで「国際人権規約」と呼ぶ)を施行した。そして規約に基づき、2012年4月20日と2016年4月25日にそれぞれ両規約に関するレポートが発表された。また、レポートの審査には海外から審査委員を招き、両規約の執行状況に対する意見と提言を受けた。
行政院(内閣)は6月29日午後、「両規約第3回国家レポート発表」記者会見を開いた。第3回国家レポートは昨年5月に準備会議がスタート、今年1月に中国語版の内容を確認した。その間8カ月、68回の会議を経て内容が確定したという。レポートでは、台湾では2015年から2019年までに人権の面で重大な進展があったと指摘している。今年5月末に大法官会議(憲法裁判所に相当)で「通姦罪」(姦通罪)が違憲と判断されたことも含まれる。「通姦罪」については、過去2回の国家レポートに対する海外審査員の結論でいずれも両規約に違反していると指摘され、1日も早く廃止するよう提言されていた。
2015年から2019年までの間に人権が大きく進展した点は、監察院(台湾の最高監察機関)の下に国家人権委員会の設置が決まったこと、そしてアジアで初めて同性カップルの婚姻に関する特別法が制定されたことなど。すでに台湾では4,000組以上の同性カップルが婚姻届を提出した。また、「あらゆる形式の人種差別の撤廃に関する国際条約推進プロジェクト」、労働者の権益と居住権の保障、訴訟手続きと被収容者の権利の改善、文化権の向上、企業の社会的責任の強化、先住民族の権益保障と人身売買の防止なども含まれる。
法務部(日本の法務省に相当)は来年3月に海外の専門家10名を台湾に招き、第3回国家レポートに対する審査を行ってもらう。これら審査員たちの期待に応えるため、政府は昨年末から「国家人権行動計画」の準備に取り掛かっており、人権に関する様々な国際規約の重要な項目を総合し、人権を進展させるための政策を提示する。例えば、いかにして国家人権委員会の働きをスムーズなものとするか。また、企業の利益と投資は人権規約に沿うものでなければならないなど、世界のビジネス上での人権も確実に守っていくことなどだ。
政府は、今年12月10日の世界人権デーには「国家人権行動計画」を正式に提示する考え。過去2回の両規約国家レポートは総統府国家人権諮問委員会が発表したが、今年8月1日には監察院に国家人権委員会が出来るため人権諮問委員会の段階的な役割は終わることになる。また、このため第3回国家レポートは国としての人権政策を担う行政院がバトンを受けて発表した。