新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響は、アフリカにおける中華民国(台湾)唯一の国交樹立国、エスワティニ王国にも及んだ。エスワティニ王国に10年以上前から医師を駐在させ、医療支援を行っている私立台北医学大学附設医院(台湾北部・台北市)は、エスワティニ王国からの依頼を受けて台湾から医療チーム「Taiwan We Go Team」を追加派遣し、同国の新型コロナウイルス対策を支援した。私立台北医学大学附設医院は22日、記者会見を開催し、2か月にわたる支援の成果を説明した。
エスワティニ王国に派遣されたのは私立台北医学大学附設医院成人感染科の陳立遠医師、重症医学科兼胸腔内科の梁書亮医師、呼吸療法士の李芯妤さん、重症患者看護専門看護師の林侑暄さんの4人。一行は5月1日よりエスワティニ王国の病院に駐在し、新型コロナウイルス感染者の治療に当たると同時に、教学や育成を通して、現地の重症患者ケアの能力向上に協力した。
陳立遠医師によると、医療チームは台湾と比べて医療設備が不足している状況の中、限りある資源を積極的に活用し、教学や訓練に取り組んだ。その結果、現地の医師も患者に対する気管挿管や人工呼吸器の離脱を行うことができるようになった。
陳立遠医師によるとこの2か月間、チームは現地の病院で新型コロナウイルス感染者と健常者の接触を避けるための動線の確保、人工呼吸器が必要な重症患者のケア、院内感染のリスクを引き下げるための指導などを行った。その対象となったのはエスワティニ王国にある75%の医療機関(6か所)とすべての感染症指定病院(2か所)。
このほか、医療チームは10種類を超える教材を作成した。内容は新型コロナウイルスという感染症に対する理解を深めるもの、防護服などの使用方法、人工呼吸器の設定・調整に関するものなど。また、43回の授業を行い、全国的なシンポジウムも2回開催した。参加者は延べ500人に上った。
想定外だったのは7月1日の帰国後、一行4人が14日間の「居家検疫(=自宅での隔離。一切の外出が禁止される。海外からの帰国者・入国者が対象となる)」を行っていたところ、同じ帰国便に搭乗していた乗客の新型コロナウイルス感染が確認されたことだった。このため4人も中央感染症指揮センター(新型肺炎対策本部に相当)によって濃厚接触者と認定され、途中から「居家隔離(=居家検疫と同様、一切の外出が禁止される。濃厚接触者が対象となる)」に切り替えられた。一行の隔離は今月15日、無事に解除された。