行政院(内閣)の蘇貞昌院長(首相)が7月30日の閣議で、台湾は気象観測の面で世界の最先端にあると指摘、気象観測は人々の安全を確保するばかりでなく、国を守るための有効な手立てであり、人材の充実のほか関連の設備も常に進化させなければならないと強調した。蘇行政院長はまた、政府各省庁に対し、中央気象局(日本の気象庁に相当)とどう連携していくかを考え、データを有効に活用して時代に合った政策を実現するよう求めた。
台湾は狭く特殊な地形をしているため、気象データの早期の把握は水資源の保全、災害対応、農業生産、イベント開催などに大きく寄与することになる。その点、中央気象局はデータの幅広い連結とインターネットを通じた人々への情報提供の面でこのところ大きく進歩している。
蘇行政院長はこうした状況を踏まえて、気象局が情報を把握すると同時に、自発的に政府各省庁及び国民にそれを提供するよう希望、「我々にはすでにその能力がある」と述べた。蘇行政院長はそうした情報として、ダムの放流や貯水、休耕、台風に備えての収穫、リスク管理、浸水、災害などを例に挙げたほか、特別な気象の変化があった場合は近海で行われている生け簀を使った養殖などの関連情報も必要になるだろうと注意を促した。
行政院農業委員会(日本の農水省に相当)の陳吉仲主任委員(大臣)によると、同委員会は気象データによる最大の受益者で、その経済的価値は年間で10億台湾元(約35億6,000万日本円)を超える。陳主任委員は、例えば気象局が南西気流による大雨を予測したならば、農業委員会は前もって農家に対し、消費者に影響が出ないよう農業損失を避けよと呼び掛けられるし、二期目を休耕にせず引き続き種をまき、田畑への取水を止めないよう指導することもできると説明した。陳主任委員はさらに、世界の飢餓人口やトウモロコシ、小麦の先物取引はいずれも気象データと直接関係しており、正確な気象予測データは政策決定にプラスで行動の変容も可能にすると期待した。
一方、気象観測は天気予報の基礎となるだけでなく、今ではビッグデータやIoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動通信システム)の最新技術のようにデータの分析がなされている。それは例えば減災、防災、救災(災害救助)への運用につながる。中央気象局は今後、スマート化された観測ネットワークの構築にいっそう力を入れ、政府各省庁に情報サービスを提供していくことにしている。
蘇貞昌行政院長は、台湾は気象観測の面で世界の最先端にあり、人材がそろっているほか設備も絶えず進化しているとした上で、政府として今後もこれを重視し、支えていく考えを強調した。