眼の悪性腫瘍である網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)の治療のため、日本への渡航が認められた台湾南部・高雄市に住む范姓の男児(3歳)が21日より、日本の国立がん研究センター中央病院で治療を開始した。治療を担当するのは国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科長を務める鈴木茂伸医師。治療は放射線を発生する金属の板を腫瘍部に固定し、集中的に放射線を当てて腫瘍を消滅させるというもの。台北駐日経済文化代表処(東京都港区白金台)の謝長廷代表(=駐日大使に相当)は同日、自身のフェイスブックに男児の近況を報告すると共に、手術の無事を祈った。
謝長廷代表の書き込みによると、男児は21日早朝、台北駐日経済文化代表処の職員に伴われ、14日間の隔離を行っていた宿泊施設を出て、祖母や仏教系慈善団体である慈済慈善事業基金会が手配した通訳ボランティアに付き添われて病院へ向かった。病院では各種の検査を行ったあと「手術」が行われた。謝長廷代表によると、この「手術」は腫瘍を摘出するような一般の外科手術とは違い、全過程に2~3日かかる治療となる。謝長廷代表はフェイスブックで「25日の退院時に、喜び、祝福できるよう、男児のために祈りを捧げて欲しい」と呼びかけた。
男児は生後まもなく網膜芽細胞腫の診断を受けた。左の眼球はすでに摘出し、現在は義眼を装着している。右の眼球については3歳になってから転移が認められた。男児の親族は右目を温存するため、日本で最先端の「小線源治療」を受けさせることを決めた。この治療は、台湾ではまだ行なわれていない。
新型コロナウイルスの影響で渡航制限が実施される中、男児の日本渡航を認めるべく台湾と日本の関係者が協力した結果、男児と祖母は今月5日、無事日本へ渡航。14日間の隔離生活を終えて、21日より治療を開始した。公務で一時帰国していた謝長廷代表も、男児の日本渡航を実現するため奔走したほか、日程を切り上げて日本へ戻り、男児のために万全の支援ができるよう指揮に当たっている。