外交部の呉釗燮部長(外相)は8月31日にフランスの政治雑誌『Politique Internationale』のインタビューを受け、自衛能力の強化を目指す台湾の決意や、世界各地に勢力を拡大しようとする中国の野心などについて語った。また、民主主義のパートナーが連携することで、現状を変えようとする中国の企みを阻止しようと呼びかけた。インタビューの内容は今月発行された秋号に掲載された。呉部長の発言の概要は以下のとおり。
【香港情勢の変化から学ぶ台湾】
香港情勢の変化は、台湾にとって参考になるものだ。香港はこれまで自由主義の象徴とされてきた。しかし近年は北京当局の強い圧力を受けている。2020年6月に「国家安全法」が施行されると、香港の言論の自由は全面的に抑圧された。今年8月、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問すると、北京当局はそれを言い訳に、台湾周辺の海域と空域で大規模な軍事演習を行った。中国による台湾侵攻の可能性が大幅に高まったとして、多くの人が懸念を強めた。
【自由と民主主義の生活スタイルを守るというゆるぎない決意】
中国による台湾侵攻の可能性に対して、台湾の政府と人々は国家の主権と自由、民主主義の生活スタイルを守るというゆるぎない決意を示している。政府としても、万全の準備を整え、軍力の整備、非対称戦術の強化などを通して、国土の安全を守ろうとしている。同時に、民主主義のパートナーとの連携を強化し、国際社会から支持を取り付けようとしている。
【多くの国が台湾支持を表明】
すでに海外の多くの国々が台湾を支持する立場を明確に表明している。例えば台湾と日本は偽情報(フェイクニュース)の規制、海域の安全、自然災害への備えなどの分野で緊密な協力関係にある。イギリスのトラス前首相は、NATO及び欧州連合(EU)は台湾が防衛能力を備えられるよう協力すべきだと表明した。豪州、カナダ、チェコ、リトアニアなどの国々も台湾支持の立場を示している。NATO及びG7(主要7か国)サミット、フランス政府なども、台湾海峡の平和と安定に関心を寄せていることを強調している。こうした国際社会の一致した関心と具体的な協力は、台湾海峡の現状を変更しようとする中国の企みを阻止することができるだろう。これは、台湾海峡の平和のみならず、自由で開かれたインド太平洋地域の安全と安定を守ることにつながる。
【中国にとって台湾制御は最初のステップ】
中国の野心は台湾だけにとどまらない。中国はソロモン諸島と安全協定を結ぶなど、その勢力を太平洋地域にも拡大しようとしている。また、「一帯一路」構想を通してその勢力をミャンマー、パキスタン、スリランカ、ジブチなどインド洋地域にまで拡大しようとしている。つまり、台湾を制御することは最初のステップに過ぎないのだ。台湾は、北京の独裁政権が世界にその勢力を拡張するために、避けては通れない場所なのだ。
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『Politique Internationale』はフランス語圏で最も影響力を持つ国際政治を専門とするジャーナルの一つで、これまでも各国の元首や政治家などにインタビューを行ってきた。最新号では呉釗燮部長のほか、「前線に立つポーランド」と題するポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相へのインタビュー記事や、「ウクライナとリトアニア:同様の戦闘」と題するリトアニア外務省のガブリエリュス・ランズベルギス大臣のインタビュー記事も掲載している。
報道内容(フランス語)についてはこちらを参照のこと。
https://politiqueinternationale.com/revue/n177/article/veillee-darmes-a-taiwan