中華民国外交部(日本の外務省に相当)の呉釗燮部長(外相)は26日、スペインの日刊紙「ラ・ラソン(La Razón)」のアジア特派員、Mar Sánchez-Cascado氏によるオンラインインタビューに応じた。インタビューの内容は、28日に「台湾が民主主義だから、習近平は台湾を侵略したいと考える(スペイン語原題:Xi Jinping quiere invadir Taiwán porque es una democracia)」とのタイトルで掲載された。以下は、インタビューの要旨。
まずは、中国大陸が描く台湾侵攻シナリオや権威主義拡大の行状について説明する。今年に入ってから中国軍機による台湾侵入は延べ3,000機以上を数え、過去2年間の延べ380機、延べ972機をはるかに超えた。さらに、台湾に対する経済的脅迫や偽情報拡散などによって、台湾内部の混乱を引き起こすよう企てている。中国大陸はまた、台湾に対してだけでなく、東シナ海や南シナ海における軍事活動も強化している。例えば中国大陸は4月に、ソロモン諸島と安保協定を締結し、オーストラリアやニュージーランドなど周辺地域の安全保障に脅威を与えている。
中国大陸が台湾侵略を企てるのには2つの理由がある。1つ目は、中国大陸が勢力圏を確保するため、独自に設定する第1列島線において、台湾が重要な位置にあり、台湾を侵略することで中国大陸の軍事戦略上の利益と一致していること。2つ目は、台湾が民主主義であること。中国政府は、国民から「台湾にはなぜ自由、基本的人権、法治制度があるのか」との疑問を問われても答えることができない。中国大陸では実現できないならば、台湾の民主主義を壊してしまえば話は早いというのが中国大陸の考えだ。
新型コロナウイルス感染を徹底的に抑制する「ゼロコロナ」政策の解除を進める中国大陸では最近、感染が急激に拡大し、新たな混乱を招いている。感染者の急増で国内情勢が悪化しているほか、金融、不動産などの分野で様々な問題を抱える。中華民国政府は状況を注意深く観察しており、中国大陸が国内の問題や矛盾を外部化する可能性を否定できない。国内の緊張状態を緩和するため、台湾をスケープゴートとして、紛争や危機を引き起こす懸念がある。このような状況に直面している台湾は、防衛力を強化し、国家の主権と民主主義や自由を守る準備を万全に整えなければならない。
米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問したことで、中国大陸は台湾周辺における軍事演習を実施した。さらに「台湾問題は中国大陸の内政で、他国が干渉する権利はない」と発言した。中国大陸の勝手な思いつきや挑発は、疑いなく台湾海峡の現状を危険にさらし、地域の緊張を高めていることから、国際社会からは続々と大きな懸念が示されている。スペインに対しても、そのほかの民主主義国家と一致した立場を取り、台湾海峡の平和を脅かし、地域の現状を変えようとする中国大陸のいかなる企みや侵略行為も、共に拒絶するよう要請する。
ロシアのウクライナ侵攻以来、台湾は直ちに世界の民主主義国家に名を連ね、ロシアへの制裁措置を講じ、ウクライナへの人道復興支援活動に取り組んだ。また、ウクライナの対ロシア戦を手本として、台湾の非対称な利点を最大限に生かした非対称戦争に備えている。防衛力と侵攻に対抗する全市民の決意を強化し、引き続き国際社会における台湾への支持を得るよう努める。台湾の半導体産業は、世界経済の発展で極めて重要だ。万が一、中国大陸からの侵攻によってサプライチェーンが断絶すれば、世界への衝撃は想像を絶するほど大きなものとなる。