数位発展部の唐鳳(オードリー・タン)部長(=デジタル大臣に相当)は12日、フランスの国民議会(下院に相当)の「海外からの干渉調査委員会(Investigative Committee on Foreign Interference of the French National Assembly)」が開いた公聴会にオンラインで参加し、海外からのサイバー攻撃に関する台湾の経験について知見を共有した。唐鳳部長は「台湾が遭遇した状況は決して個別のケースではなく、決してヨーロッパと無関係なことでもない。各界が台湾とともにデジタル・レジリエンスの強化を目指し、世界に向けて民主主義の強靭な精神を示そう」と呼びかけた。
この公聴会は台北時間12日午後8時から約1時間にわたって行われ、すべてライブ配信された。唐鳳部長はまず10分間のブリーフィングを行い、その後、委員長や議員らの質疑応答が行われた。会議の内容は録画されており、国民議会の公式サイトで誰でも視聴できるようになっている。
唐鳳部長はまず、台湾が民主陣営の中でも権威主義拡張体制に対抗する最前線にあり、サイバー攻防戦が繰り広げられる世界屈指のホットスポットに位置することを説明した。唐鳳部長はその根拠として、セキュリティの抜け穴を狙った台湾政府へのサイバー攻撃が、2022年は2021年の約2倍に増えたこと、2022年にペロシ米下院議長が台湾を訪問した際には、通常の23倍のサイバー攻撃が海外から台湾に対して行われ、ハッカーによって電子掲示板の内容は悪意あるメッセージに書き換えられるような事例も確認されたことなどを挙げた。唐鳳部長は「これらのサイバー攻撃は、市民の民主主義体制への信頼を損なおうとするものだが成功には至っていない」と述べた。
唐鳳部長はこうした事例を踏まえた上で、「台湾が遭遇した状況は決して単一の事例ではなく、決してヨーロッパと無関係でもない」と断言。サイバー戦争の占める地位はますます重要になってきており、ロシアのウクライナ侵攻がまさにそれを示していると述べた。唐鳳部長はまた「台湾は民主陣営の一員として、権威拡張主義の脅威を切実に実感しているからこそ、何のためらいもなくウクライナに支援の手を差し伸べた。フランスも同様に、ヨーロッパや民主陣営における重要な国家だ。その振る舞いは全世界に対して重要なメッセージを与えると信じている」と述べた。
フランスの国民議会は昨年12月6日に「海外からの干渉調査委員会」を発足させた。主に外国の政府、組織、企業、営利団体、個人などが、政治、経済、財政などの方法でフランスのオピニオンリーダーや政府高官、政党などに影響を与えたり、賄賂で買収しようと企てていないか調査を行っている。