外交部(日本の外務省に相当)の俞大㵢常務次長(=事務次官)が21日、コロンビアで発行部数最大の日刊紙「El Tiempo」による取材に対し、台湾とラテンアメリカに位置する国交樹立国との関係、蔡英文総統による今回の外遊の成果と中国の反応、台湾海峡の現状を一方的に改変することへの民主主義陣営の反対、台湾海峡での有事が世界にもたらす影響などについて踏み込んだ説明を行った。同紙の駐ベネズエラ特派員、Ana María Rodgríguez氏によるこのインタビューの内容は、「中国による軍事的脅威への台湾の対策(¿Cuál es la estrategia de Taiwán frente a la amenaza de guerra con China?)」と題され、22日に同紙のYouTubeチャンネルで配信された。
俞常務次長は、「台湾はラテンアメリカとの実質的な関係発展を望んでおり、経済、文化、科学技術、教育の面でより幅広い協力と交流を目指す」と説明。その上で、「台湾は自由と人権を断固守り抜き、他国の外交には干渉しないが、同じ価値を享受する国々とは協力し、互いの繁栄と発展を追求していきたい。これこそ我が国の一貫した外交政策だ」と述べた。
さらに俞常務次長は、パラグアイは台湾が揺らぐことなく支持する仲間であり、台湾は長年、医療や水産養殖、らんの栽培、専門人材の育成などで同国を助けて来たと説明、「パラグアイへのサポートは同国での選挙結果によって変わるものではない。パラグアイが台湾との関係を大切にし、中国の偽りの約束を軽率に信じないよう心から希望する」と述べた。俞常務次長はホンジュラスのケースに触れ、中国は同国と国交を樹立してから実際には同国産のエビを買っておらず、コスタリカやパナマ、ドミニカ共和国も同様に中国との国交樹立後、利益を得ていないばかりか中国との貿易赤字が膨らんでいると説明した。
また俞常務次長は、蔡総統がさきごろ行ったグアテマラ及びベリーズ訪問について触れ、「国交樹立国との友情を深められたほか、二国間協力の成果を一緒に確認できた」とその意義を強調。さらに、米国で行われた蔡総統とケビン・マッカーシー下院議長との会談の議題は台米経済協力、ならびに世界が懸念する台湾海峡の安全保障と民主の価値についてだったと説明した。続けて俞常務次長は、「しかし中国はわけもなくこの外遊を口実にして再び軍事演習を実施し、台湾海峡を空と海から封鎖して台湾を脅かした。昨年8月、当時のナンシー・ペロシ米下院議長の訪台後に台湾に対して行った脅しと同じで、中国が台湾を奪い取ろうとする企てが露わになった」と中国側の動きを批判した。
俞常務次長は、台湾は主権国家であり、中華人民共和国が出来たときからその領土が台湾に及んだことはなく、同国に台湾を管轄する権利など無いと強調。さらに米国のバイデン大統領が20日にフランスのマクロン大統領ならびに欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と電話で会談した中で、台湾海峡の現状と地域の平和、安定を維持する立場を改めて表明したこと、このほど行われたG7(主要7カ国)の外相会合が台湾海峡の平和の重要性を強調したこと、そしてドイツのアナレーナ・ベアボック外相が訪中した際、中国による台湾の武力統一は受け入れないと面と向かって伝えたことを挙げて、「台湾海峡の平和が世界各国から重視されていることが見て取れる」と評価。そして、台湾は世界経済にとって極めて重要な役割を担っており、台湾海峡の現状維持は各方の利益に合致すると主張した。
俞常務次長はまた、台湾の半導体は携帯電話やパソコン、家電製品、自動車などに幅広く使用されており、産業として極めて大きな影響力を持つと指摘、「台湾とラテンアメリカははるか遠くにあるようだが、台湾海峡で戦争が勃発して半導体の生産が脅かされた場合、ラテンアメリカへの影響も必至だ」と警告。コロナ禍が収束し、サプライチェーンの再構築が急速に進む中、米国は産業チェーンを近隣諸国に移し、台湾や日本、韓国の企業は中国から撤退して別の製造拠点を探っているとして、ラテンアメリカの国々が台湾の経済的な実力を認識し、世界のサプライチェーンが移転する機会を利用して台湾との連携を強化するよう呼びかけた。
「El Tiempo」は1911年創刊。コロンビアで販売部数の最も多い日刊紙で、グループは文字媒体、テレビ、インターネットへと広がっている。長い歴史を有し、同国の政府や各界のエリートから重視されるなど、世論に対して大きな影響力を持っている。