呉釗燮外交部長(=外務大臣)が2日、フランス通信社(Agence France-Presse, AFP)でアジア太平洋地域のうち台湾、香港、マカオを担当するDene Chen主任及び台湾特派員のAmber Wang氏によるインタビューに応じた。インタビュー内容は同日、「台湾の外務大臣、『中国との紛争は悲惨な結果招く』と発言(Taiwan FM says conflict with China would have 'disastrous results')」と題されて配信された。
呉外交部長は、中国が日々エスカレートさせる「脅し」に向き合い、台湾は国際社会の責任ある一員として「挑発しない」政策をとる一方で、国防予算の増加、防衛装備の調達、軍事革新の積極的な推進と国軍の訓練強化などを以って自己防衛の決意を示していると説明。また、ロシア・ウクライナ戦争から学び、「非対称戦力」の強化、ならびに国際社会で理念の近い国々の支持取り付けに取り組んでいると述べた。
呉外交部長は、「台湾人民には国、主権、民主的な生活方式を守り抜く決意があるが注意も必要だ」と強調、中国では経済成長のスローダウン、外国からの投資の衰退、内部的政治闘争などから社会不安と人心の不満が生まれており、このため中国は外部に危機を作り出して内部の目をそらそうとする可能性があり、台湾はその「身代わり」にされるのを防ぐ必要があると指摘した。
呉外交部長は、台湾は戦略的に重要な地位にあるとして、世界の先端半導体の90%以上が台湾で生産されていること、世界の貨物の半分以上が台湾海峡を通過していることを指摘、「台湾海峡で軍事衝突が起きたならば、全世界の海運とハイテク産業のサプライチェーンは深刻なダメージを被るだろう」と懸念を表明。呉外交部長は、このため民主主義陣営による台湾を応援する声と支持の行動は極めて重要で、このところ民主主義国の台湾に対するエールはいっそう力強くなっていると説明、G7サミット(主要7カ国首脳会議)など重要な国際会議で各国の指導者たちが台湾海峡の平和と安定を維持する重要性を繰り返し訴え、一方的な現状変更に反対していると指摘した。呉外交部長は、「こうした支援の声は中国の勢力拡大の野心と軍事面での向こう見ずな行動を制止し、抑止効果を生んでいる」と歓迎した。
呉外交部長は同時に、フランス、米国、カナダ、イギリス、欧州連合(EU)、ドイツ、チェコ、リトアニアなどがインド太平洋地域の平和と安定の維持をそれぞれのインド太平洋戦略に盛り込んでいることに感謝。またフランスはそれにとどまらず、8月1日に新たな軍事計画法(2024-2030 LPM)の立法手続きを完了し、台湾海峡の航行の自由(Freedom of Navigation)を法律で守る初めての主要国になったとして謝意を表した。
また来年の総統選挙について質問された呉外交部長は、選挙に伴う中国の軍事的な威嚇は過去に比べて控えめなものになると予想、なぜなら過去の選挙結果から台湾の有権者が中国の望むような影響を受けないことが証明されているからだと説明した。呉外交部長は、中国はこのため近年はやり方を改め、より複雑なフェイクニュースや台湾社会への浸透、認知戦などを通じて選挙結果に影響をもたらそうとしており、「我々はそれらを厳重に防ぐ必要がある」と語った。