蔡英文総統が10日午前総統府で、米国の「クラックテクノロジー外交研究所(Krach Institute for Tech Diplomacy at Purdue, KITDP)」の訪問団と会談した。同研究所はパデュー研究財団(Purdue Research Foundation)傘下のシンクタンク。一行はトランプ政権下で国務次官(経済、資源、環境担当)を務めたキース・クラック(Keith Krack)氏が同研究所の会長として率い、9日から12日まで台湾に滞在している。クラック氏は2020年に続く2度目の訪台で、前回は現役の国務次官として台湾を訪問、それまでの41年間で台湾にやって来た最高クラスの米政府高官として話題となった。
蔡総統は、クラック氏の主張する経済安全保障と国家安全保障の概念に非常に同意すると述べると共に、米国が1日も早く台湾と二重課税回避の協定を結び、互いの投資により多くの利益をもたらすよう希望した。蔡総統はまた、権威主義の拡張に向き合い、これからも米国と連携し、地域と全世界の平和ならびに繁栄のため貢献していく考えを示した。
クラック氏は、前回米国務次官として訪台した時のことに触れ、当時は米国のグローバル経済安全保障戦略を立て、成長の促進と国家安全保障の強化、権威主義による侵略への抵抗を図ることが仕事の重点で、三つの理由から台湾を戦略の核心と位置付けたと明かした。三つの理由とは、「台湾は民主主義の輝ける灯台で自由の化身であり、世界のほかの国々に啓発を与えること」、「台湾が科学技術とイノベーションの面で持つ卓越した実績は自由主義社会の成果を証明していること」、「台湾は米国にとって真の友人で、自由を促進していく上で不可欠なパートナーであること」。
「中国政府による自分への制裁は『名誉勲章』だ」とするクラック氏は、中国が台湾に脅威に感じている理由は台湾の自由と繁栄が中国の習近平国家主席の「華人に活発な民主主義などありえない」とする幻想を打ち破ったからだと分析。クラック氏は、「台湾は決して孤独ではない。米国人のみならず世界各地の自由な人々が台湾人と共にある。台湾を支持するのは民主主義国が互いに支えあっているからだけでなく、米国の経済、科学技術、そして国家安全保障にもかかわって来るからだ」と強調した。
クラック氏によると、米国議会は「クラックテクノロジー外交研究所」に「グローバルテクノロジー安全保障委員会」をリードするよう委託、世界的なテクノロジー安全保障戦略を制定して科学技術が権威主義政権の武器になるのを防ごうとしている。クラック氏は、この戦略の重要な任務は台湾の繁栄ならびに国際的な地位、主権の強化だとして、それに向けて同研究所では現在、「台湾イノベーション・繁栄センター(Taiwan Center for Innovation and Prosperity, TCIP)」を立ち上げようとしていることを明らかにした。クラック氏は同センターを立ち上げる理由として、「強大で強靭、かつ自由な台湾が存在しなければ世界各地の自由は権威主義の脅威にさらされることになるからだ」と述べた。