外交部の呉釗燮部長(外相)は今月11日、スイスのドイツ語日刊紙『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)』の取材を受けた。同紙は21日付の日刊紙に「Wenn wir den Autoritarismus nicht stoppen, wird er zu uns kommen(権威主義を止めなければ、権威主義が我々のところにやってくるだろう)」のタイトルで、呉部長のインタビュー内容を掲載した。以下は呉部長の発言の概要。
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中国の軍隊は急速に近代化を進めており、台湾の人々やインド太平洋地域の平和に関心を寄せる海外の人々を憂慮させている。中国は繰り返し軍用機や軍艦を派遣し、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入させ、中には台湾海峡の「中間線」を越えるものもある。中国は、「台湾海峡は国際水域にあらず」、「台湾問題は中国の内政問題だ」などと妄言を吐き、「一国二制度」を台湾に強要しようとしている。さらには、「台湾統一のためには武力行使も辞さない」などの発言を繰り返している。
中国の権威主義の野心は台湾だけにとどまらない。東シナ海、南シナ海、太平洋などでも、中国の権威主義拡張の足跡を見ることができる。例えば中国の軍艦は、日本の南西地域の島嶼付近に頻繁に出没し、日本との緊張を高めている。最近南シナ海では、中国とフィリピンの衝突が見られた。昨年中国はソロモン諸島と安全保障協定を結んだ。これにはソロモン諸島の南に位置するオーストラリアやニュージーランドが警戒を高めている。そして台湾は、民主陣営と中国の権威主義の勢力がぶつかり合う、まさに最前線に位置している。
戦争を回避するため、台湾は非常に慎重な態度で中国との関係を処理している。同時に、防衛能力の強化に取り組み、軍の改革を進めている。国防予算を増加し、軍隊の訓練を強化すると同時に、国際社会から支持を取り付けるために努力し、台湾陥落が容易ではないこと、台湾に対して戦争を発動することは中国にとっても甚大なリスクを伴うことなどを中国に理解させようとしている。ゆえに台湾としては、台湾と中国は一触即発の状況ではないし、戦争は回避できると考えている。
中国がもし「台湾封鎖」を実行するとしたら、それは即ち、国際法上の戦争行為を意味する。このため国際社会が強烈に反発するだろう。なぜなら台湾海峡の平和と安定は、世界の安全と繁栄にとって不可欠であるからだ。具体的には、世界で生産される半導体チップの60%以上、最先端半導体に至っては90%以上が台湾で生産されている。また、世界の貨物の50%以上が、台湾海峡を通過している。ゆえに「台湾封鎖」は世界経済に重大な災難をもたらすことになる。その影響は、ロシアによるウクライナ侵攻を大きく上回ることになるだろう。
台湾の半導体産業は、世界のサプライチェーンや研究・開発において重要な地位を築いている。それは40年以上の歳月をかけて作り上げたものであり、完全な経験に基づくもので、容易にコピーできるものではない。このため、台湾の半導体産業が競争力を失うとか、グローバル・サプライチェーンにおける台湾のプレゼンスが弱体化するなどという懸念は持っていない。中国は近年、半導体産業の研究・開発に力を入れている。我々も、台湾のハイテク企業の技術の中国流出を防ぐために目を光らせている。中国が半導体の最先端技術を掌握しない限り、中国が台湾、日本、米国などの国々が持つハイテク産業のサプライチェーンにおける核心地位を超越するのは難しいだろう。
ウクライナで戦争が発生したことは悲劇である。民主体制がいま、独裁政権の侵略を受けているのである。民主陣営が連携して権威主義の拡張を阻止しなければ、権威主義のほうが我々に近づいてくるだろう。同様に、国際社会は民主主義の台湾を支持し、団結を強めなければならない。それによって中国の権威主義の蔓延を阻止し、中国が野心をむき出しにして東シナ海や南シナ海にその権力を拡張し、地域の平和と安定を破壊しようとするのを制止しなければならない。