呉釗燮外交部長(=外務大臣)が9月5日にアラビア語と英語による衛星テレビ局、「アルジャジーラ(Al Jazzera)」のインタビューに応じた内容が13日、同テレビ局のウェブサイトにて、「Q&A: Taiwan Foreign Minister Joseph Wu talks elections and China」(台湾の呉外交部長が選挙と中国について語る)のタイトルで公開された。インタビューは同テレビ局の駐台記者、Erin Hale氏によって行われた。
呉外交部長は、「台湾の総統選挙に中国が介入するのは初めてではないが、中国が強力な方法で干渉しようとすればするほど結果はその逆になってきた」と指摘。中国は意思決定権が高度に集中し、民主的な仕組みや人民の選択を理解していないため、台湾における民主的な選挙に対して誤った期待をしていると分析し、「軍事演習で台湾を脅すことは過ちになるだろう」と述べた。また、台湾の民主的な社会の開放性を利用して経済面での脅迫やハイブリッド戦争の手段を通じて選挙結果に影響を及ぼすことは中国の常套手段だとし、その例として「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」(台湾製品への関税優遇措置)の中止をちらつかせること、ならびに従来型のメディアやソーシャルメディアを操って台湾社会への浸透を図ることを指摘した。
呉外交部長は、「台湾は民主主義陣営が権威主義の拡張に対抗する最前線に位置するばかりでなく、国際的なサプライチェーンのキー的な地位にある。世界の半導体の60%以上、先端半導体の90%以上が台湾で作られ、50%を超える貨物が台湾海峡を通過している」と説明、中国の台湾に対する武力行使が全世界の経済に災害級の影響をもたらすことは間違いなく、このため台湾海峡の平和と安定の維持は台湾の安全保障のみならず、全世界にとっても極めて重要なのだと訴えた。呉外交部長はそして、中国の野心に直面している台湾は自らの戦備を強化するほか、民主主義陣営が中国に対して集団的抑止力を発揮し、中国が何を口実にしようとも台湾に戦争を仕掛けられないよう抑えつけることを呼びかけていくと強調した。
また、台湾と日本の安全保障上の協力について問われた呉外交部長は、「地理的に隣り合わせで自由民主の価値を共有しており、両国の友好関係は人々の密接な交流と互いの信頼、助け合いの基礎の上に築かれている」と解説。「近年は両国の国会議員や与党が地域の安全保障問題について積極的に対話を強化している」と述べ、2021年に初めて双方の与党間で行われた「外務・防衛2プラス2」(外務、防衛担当議員による会合)、「外務・経済2プラス2」(外務、経済担当議員による会合)はいずれも台日の協力深化に役立ったとの認識を示した。呉外交部長は、「日本が昨年末に『国家安全保障戦略』など3つの文書(安全保障3文書)を見直し、国防予算を大幅に増額すると共に台湾に関する記述を増やしたことは、日本が台湾海峡の平和と安定の重要性をますます重視していることを示す」と述べると共に、これはまた国際社会が中国の対台湾武力行使を阻む取り組みの重要な一部であるとする見方を示した。
呉外交部長は台湾と「友邦」(国交樹立国)との付き合い方についても言及。「台湾は『友邦』との関係を大切にしている」とした上で、「友邦」への援助方式である「台湾モデル」は現地住民への直接的な援助であり、「友邦」の人々の暮らしのニーズに合わせ、農業技術団や医療団、職業訓練プロジェクトや奨学金などを通じて台湾の経験を共有し、「友邦」の人々に恩恵をもたらすことだと説明した。呉外交部長は一方で、「中国はまやかしの約束で誘惑するが最終的にその約束を果たさず、援助を受ける側の国を債務の罠に陥れる」と批判。そして、台湾と「友邦」との関係は堅実かつ安定的だとし、今後も指導者層の相互訪問を進めながら相互信頼と協力の強化に努める考えを示した。
呉外交部長はさらに、「台湾は世界の『善のパワー』として、友好的な国々と経済貿易、科学技術、気候変動、女性のエンパワーメント、フェイクニュース対策などの面で実質的な交流を行いたいと切に願っている」と訴えた。そして、最近では台湾とチェコを結ぶ直行便が就航したこと、中東欧諸国と共同でウクライナ支援を行っていること、リトアニアでの台湾代表処(大使館に相当)開設から、フランスのプロヴァンス、カナダのモントレー(近日中に開設の予定)、イタリアのミラノ(同)、インドのムンバイ(同)などで弁事処(領事館に相当)を開く運びとなったことなどはいずれもこのところの外交成果だとアピール。「台湾は互恵の交流を通じて、理念の近い国々との二国間関係を深められるよう期待している」と述べた。