米ニューヨークで国連総会の一般討論演説が行われる中、今年もアメリカの非営利団体コンコルディアは19日から21日までの3日間、年次サミットを開催した。このコンコルディアサミットには蔡英文総統が今年も約6分間のスピーチ動画を寄せたほか、数位発展部の唐鳳(オードリー・タン)部長(=デジタル大臣)が「AI時代におけるデジタルデモクラシー」をテーマにした基調講演を行い、台北駐米経済文化代表処の蕭美琴代表(=駐米大使に相当)が米国のダニエル・ラッセル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)と「シフトする安全保障:台湾について語る」をテーマに対談を行った。
数位発展部の唐鳳部長はコンコルディアサミット初日の19日に、「AI時代におけるデジタルデモクラシー」(Digital Democracy in the Age of AI)をテーマに基調講演を行い、近年の台湾におけるデジタルデモクラシーの経験を紹介するとともに、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を国際社会が達成できるよう協力するという台湾の決意と意欲を示した。
唐鳳部長はまた、世界の「インターネットの自由度」が12年連続で低下していること、民主主義の価値観がAI(人工知能)技術の濫用によって空前の危機にさらされていることに言及。そのソリューションとして最良なのがプルラリティ(多元性、相対多数)という理念であり、デジタルテクノロジーを使って民主主義の帯域幅を広げ、対立する意見を幅広く受け入れ、調和させつつ共通の観点を生み出すことが大切だと述べた。そして台湾はこれまでデジタルテクノロジーを運用して、台米の国防、経済、民間交流を強化することや、いかにプライバシーを保護しながら感染症の疫学調査を行うかについて社会のコンセンサスを作り出してきたと説明。台湾の政府は今後も「参与」、「進歩」、「安全」を三大原則として、AIの運用によって熟議民主主義を強化していく考えだと述べた。
唐鳳部長はまた、台湾の政府は民主的参加こそがグローバルな倫理的・政治的難題を解決するための最善の解決策だと強く信じており、責任ある国際社会の一員として人権を擁護し、公平で繁栄した経済発展を促進していくことは、台湾にとって妥協のない、揺らぐこともない約束だと強調した。
蕭美琴代表は20日に行われた対談の中で、台湾と米国について、同じ理念を共有する「盤石(rock-solid)」な関係であり、台米関係を強化することは米国でも台湾でも党派を超えて支持されていると指摘。また、台湾海峡の情勢に対する国際社会の最大公約数は「現状維持」であり、それはまさに蔡英文総統が指摘するように「台湾海峡の平和はこの地域の問題にとどまらず、全世界の繁栄と経済の成長を左右する必要不可欠な要素」なのだと説明した。また、台湾が地域の平和と安定を守るために尽力していること、海外諸国、とりわけ米国との連携強化に意欲を持っていること、同時に対岸(中国)との対話についても開かれた態度で臨み、現状を確保することでこの地域に住む人々に恩恵をもたらしたいと考えていることなどを伝えるとともに、あらゆるステークホルダー(利害関係者)が連携することで、平和と現状へのあらゆる干渉を消滅させて欲しいと呼びかけた。
蕭美琴代表は、台湾が国連を含む国際組織から不公平に排除されていることにも言及。新たな手法を講じて政治的な垣根を取り払う必要があると訴えた。さらに、最近行われた主要7か国(G7)外相会合の議長声明で、国際機関への台湾の意味ある参加を支持することが示されたことに感謝。米国が台湾の国際参与の機会を生み出すために「GCTF(グローバル協力訓練枠組み)」を構築し、国際社会に貢献し、国際空間を切り開く機会を台湾に与えてくれたことにも感謝した。