外交部(日本の外務省に相当)の李淳政務次長(=副大臣)が19日にカナダのテレビ放送局CBC(カナダ放送協会)の取材に応じ、その内容が21日、「Meet Taiwan's resistance. If China invades, civil defence groups stand ready」(中国が侵攻するなら台湾は抵抗、民間の防衛組織が備え固める)と題されて同テレビ局の公式ウェブサイト(CBC News)に掲載された。インタビューは同局の記者、David Common氏によって行われた。
李政務次長はまず、中国は長年台湾を脅し、恐怖を生み出すことで台湾の民心と士気にダメージを与え、また各国が台湾との関係を深めようとする意欲を削いで来たと指摘、中国が台湾に対して採るグレーゾーン戦略については「軍機や軍艦を絶えず台湾周辺に派遣し、軍事演習を実施しているほか、サイバー攻撃やフェイクニュースなどで台湾における抵抗の意志を弱めようとしている」と説明した。その上で李政務次長は、台湾とカナダはいずれも中国の浸透工作の重点的な目標になっているとして、両国が協力してこれに対処していくよう呼びかけた。
李政務次長はまた、経済的な方法で他国を脅迫するのが中国の常套手段であり、日本、韓国、フィリピン、リトアニアはいずれもそうした脅しに遭った経験を持つと指摘、最近中国は台湾の農産物の輸入を禁止することで台湾における選挙に介入しようと画策しているが、農産物は台湾の中国向け輸出のうち1%に過ぎず、台湾経済への影響は限定的だと説明した。李政務次長は、「中国は一方で台湾の半導体にかなり頼っている」とし、中国の被る経済的な影響の方が大きいため中国が半導体を「武器」にすることは考えにくいとの見方を示した。
先ごろカナダの軍艦が台湾海峡を通過したことについて、李政務次長は、「カナダが台湾海峡の安全保障への重視ならびにインド太平洋地域の繁栄と自由への懸念を示した」として感謝。北京当局は台湾海峡を「中国の内海である」とでたらめな主張をしており、カナダの軍艦が通過した際にも軍艦で挑発して台湾海峡の平和、ならびにインド太平洋地域の安全と安定を深刻に脅かしたと強調した。そして、G7(主要7カ国)は中国が武力や威圧を以って台湾海峡の現状を一方的に変更することに反対すると共に台湾海峡の問題は平和的な対話で解決するよう望んでいると指摘し、「我が国はこれを歓迎すると共に、より多くの人々が台湾海峡に関心を寄せてくれるよう働きかけていく」と述べた。
インタビュアーの問いに対して李政務次長は、「ロシア・ウクライナ戦争は軍事力と経済力の差は重点ではなく、ウクライナの人々の強大な自衛の決意、ならびに各国との安全保障面での連携、及び多角的な威嚇こそが戦場における勝敗のカギであることを示した。台湾の人々はこれに深く啓発を受け、国家防衛のコンセンサスは日増しに広がっている。台湾では国防部(日本の防衛相に相当)全民防衛動員署も発足させた」と強調した。李政務次長は、全民防衛動員署設立の目的はハード面と国民の心理面での備えを確実にしていくことで、戦争に備えることこそ侵略に対する最良の抑止だとし、これからもカナダなどの民主主義国が台湾海峡の情勢に関心を寄せ、団結して中国の向こう見ずな行動を阻んでいくことに期待した。
カナダ最大の公共放送局であるカナダ放送協会は1936年に開局。テレビ、ラジオ、インターネットなどのプラットフォームを擁しており、世論に対して極めて大きな影響力を持つという。