外交部の呉釗燮部長(外相)は10月31日に英BBCワールドサービス(英国放送協会が海外向けに行う国際放送)の時事ニュース番組『ニュースアワー(Newshour)』のヌアラ・マクガバン記者によるインタビューを受けた。インタビューの内容は同日放送された。呉部長の発言の概要は以下のとおり。
【2022年のナンシー・ペロシ米下院議長の訪台意義とは】
中国は台湾を国際的に孤立させ、台湾の国際組織への参与を妨害し、さらには中華民国(台湾)と正式な外交関係を持つ国に断交を迫るなどしている。このため、国際社会の台湾に対する支持は非常に重要だ。ペロシ下院議長(当時)のあとは、欧州議会副議長、チェコやリトアニア等の国会議長らが相次いで台湾を訪問した。海外諸国の高官らは台湾を訪問することで、台湾への支持を表明してくれている。中華民国(台湾)政府と国民は、こうした訪問を心から歓迎している。
【台湾の正副総統選挙に対する中国の干渉】
台湾ではこれまで、正副総統選挙があるたびに中国による干渉を受けてきた。しかし、台湾の有権者は、いまある民主的な生活を守らなければならず、台湾の選挙の結果を中国によって決定されてはならないと明確に意識している。もし中国の干渉を許してしまえば、中国はおそらく他国に対しても同様の手段を使って干渉しようとするだろう。だからこそ民主国家は、台湾の総統選挙に対する中国の介入に厳しく目を光らせ、武力によって台湾海峡の現状が変更されることに反対する姿勢を中国に示さなければならないのだ。
【ロシアのウクライナ侵攻から学んだ3つのこと】
台湾はウクライナ情勢に高い関心を寄せている。また、独裁政権によって攻撃を受けるウクライナのことを、わが身のことのように感じている。ロシアによるウクライナ侵攻は世の中の人々に、中国も台湾を侵犯する可能性があることを痛感させた。台湾は、ロシアのウクライナ侵攻から3つのことを学んだ。1つ目は、ウクライナの人々の国を守ることへの決意だ。これには感服させられた。2つ目はウクライナの非対称戦略だ。これは台湾が学ぶに値するものだ。3つ目は国際社会による支持が非常に重要だということ。侵略を受けている国とその国民に対して、彼らが決して孤独ではないことを知らせなければならない。
国際社会はロシアのクリミア併合を手をこまねいて見ていただけだった。ロシアはこれに味を占め、ウクライナ侵攻に踏み切った。国際社会はこのことから教訓を得て、二度と同じような状況が発生しないようにしなければならない。台湾はいま、アメリカを含む近い理念を持つ国々と連携を強化し、武器購入や非対称戦略の強化、軍事改革の推進、人員のトレーニング強化、軍備の自主開発などを通して、自身の防衛能力を強化しているところだ。
【国際社会は台湾の重要性に目を向けて】
台湾の重要性に国際社会はもっと目を向けるべきだ。台湾は中国という権威主義拡張と向き合う最前線にあり、常に中国が仕掛けるさまざまなグレーゾーン戦略による攻撃や浸透を受けている。もし台湾が中国の手に落ちれば、その他の国々の安全も脅威に直面することになるだろう。また、台湾海峡は世界でも最も忙しいと言われる航路の一つだ。国際貨物の約50%が台湾海峡を通過しており、台湾は先端半導体の主要な製造拠点である。台湾海峡で一旦戦争が発生すれば、国際社会や国際経済に与える影響は、ロシア・ウクライナ戦争をはるかに上回るだろう。しかし、台湾有事は決して一触即発の状態でもなく、避けられないことでもない。台湾は国際社会の支持を必要としている。中国が台湾侵攻に踏み切らないよう抑止力になって欲しい。