中華民国（台湾）外交部の呉釗燮部長（外相）は5日、欧州15か国のメディア15社による合同取材に応じた。呉部長はこの取材で、台湾がいかにして中国が仕掛けるハイブリッド戦（軍事にとどまらずサイバー攻撃など複数の非軍事的手法で現状変更を迫る手法）に対応しているかや国際社会における台湾の重要性、それに台湾と欧州各国の関係などについて語った。取材の内容はすでにスロベニアのオンラインニュースサイト「24ur.com」、イタリアの日刊紙「Il Foglio」、イギリスの日刊紙「The Independent」、ノルウェーの日刊紙「Dagbladet」、オーストリアの日刊紙「Die Presse」、ラジオ・フリー・ヨーロッパのジョージア支部「Radio Tavisupleba」などが報じ、欧州各方面から高い関心が寄せられている。呉部長の発言概要は以下のとおり。
【台湾は戦争回避に尽力】
中国が台湾を武力侵攻するリスクは始終存在している。しかし、決して戦争の危機が差し迫っているというわけではないし、回避できないわけでもない。台湾は国際社会の責任ある一員として、戦争の発生を回避するため尽力している。ロシアのウクライナ侵攻で、権威国家が民主国家に対して任意に攻撃を仕掛ける現実を目の当たりにして、台湾はまるで自分のことのように感じている。ゆえに、この得難い自由を守る決意をより固め、自身の防衛能力を高め続けるとともに、非対称戦略の強化にも力を入れて、中国が台湾侵攻に踏み切らないよう抑止している。
【戦争回避のため欧州各国は中国に呼び掛けを】
戦争はあらゆる人にとって災難だ。台湾は半導体のグローバル・サプライチェーンで極めて重要な地位を占めている。しかも、台湾は世界のシーレーンの要所にあり、もし戦争が発生すれば、それは台湾や中国だけでなく、世界経済にも深刻な打撃を与えることになる。欧州各国のリーダーが引き続き、台湾海峡の平和と安定は世界の安全や繁栄に必要不可欠であるとの認識を持ち、中国に対して武力や脅威による台湾海峡の現状の一方的変更に強く反対し、台湾海峡及び地域の平和をともに守っていって欲しい。
【中国の経済制裁には対抗を】
中国はたびたび経済制裁によって諸外国に圧力をかける。台湾産パイナップルなどの果物を禁輸したのもそのうちの一つだ。台湾はこれを受けて、中国との貿易や投資に関して審査のメカニズムを確立した。台湾経済が過度に中国に依存しないようにするためだ。欧州各国も中国との貿易は慎重に行い、中国が経済制裁を行った場合には対抗措置を講じなければならない。
【台湾と欧州諸国の関係強化】
台湾は近年、チェコやリトアニアなど欧州諸国との関係を強化している。台湾と欧州諸国は自由、民主主義などの価値を共有する。これが近年、双方が急速に距離を縮めている主な要因の一つだ。チェコ上院は積極的に台湾とチェコの連携強化に取り組み、台湾の国際組織への参与を支持する決議を可決しており、台湾はこれに非常に感謝している。リトアニアは欧州で最初に、台湾に対して新型コロナウイルスワクチンの無償供与を行った国だ。自分もリトアニアを訪問し、講演を行うことができた。こうした友好関係は得難いもので、台湾の人々は強い感銘を受け、リトアニア産の商品を積極的に購入しようとしている。台湾はこうした「善の循環」を、欧州のさらに多くの国々に拡大できるよう望んでいる。