中華民国外交部(日本の外務省に相当)の呉釗燮部長(外相)は3月29日、デンマーク最古の新聞社「Berlingske」の台湾特派員、Alexander Sjöberg記者からのインタビューに応じた。デンマーク政府が先ごろ、台湾人住民の滞在許可証の出生地表記を「中国」に変更したことを受けて、呉部長は、デンマークに対して、台湾市民の自由意志を尊重するよう呼びかけ、国際社会に認められている「両岸が互いに隷属しない客観的事実」を直視するよう求めた。インタビューの内容は3日、「台湾外相:中国がデンマークの決定を利用しようとしている」と題して同紙1面に掲載され、国際社会から注目と関心を集めた。以下は呉部長のインタビュー要旨。
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2019年、民主主義サミットに招かれ、コペンハーゲンを訪れ、演説を行った。デンマークは外相として初めて訪問した欧州の国でもあり、特別な存在となっている。現在の民主主義陣営は、権威主義の拡大と闘うために団結している。デンマークが民主主義国家の模範として、台湾市民の自主的な意思を尊重し、台湾市民がどのように称されるかを自由に選択できるようになることを望んでいる。民主的な台湾を決して権威主義的な中国の一部として分類してほしくない。
台湾市民は、デンマークや多くの欧州諸国がウクライナを支援していることに敬意を表する。ロシアのウクライナ侵攻と同様に、中国も台湾を併合しようとしている。デンマークが台湾を中国の一部と見なすべきだと考えているのであれば、中国によって利用されるだろう。中国の台湾に対する誤った主権主張に法的根拠を提供することで、中国は、台湾に対する武力行使の試みを、より合理化できるようになるからだ。台湾を中国の一部だというレッテルを貼ることは、国際社会に重大な影響を及ぼすことから、欧州の人々が、権威主義による威圧行為に対抗する台湾を支持するよう望んでいる。
台湾は主権国家だ。台湾を中国と呼ぶのは大きな間違いで、ウクライナをロシアの一部と呼ぶのと同様、市民の敏感な感情に影響を及ぼすだろう。今年2月に欧州議会が採択した共通外交・安全保障政策(CFSP)報告書にもあるように、台湾に対する中国の領有権主張には国際法上の根拠がなく、台湾と中国は互いに隷属しない。民主的に選ばれた台湾の政府だけが、国際社会における台湾市民の代表となり得る。これはデンマークに対し、EUの立場に同調し、他のEU諸国にならって台湾と呼ぶよう求めるものだ。
民主主義陣営に対し、中国による権威主義の拡大が世界の平和と安定にもたらす脅威を慎重に検討し、宥和的な態度で対応しないよう呼び掛けたい。なぜなら、それでも権威主義拡大という野望はなくならないからだ。宥和政策は世界に平和をもたらさないだろう。
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呉部長へのインタビュー記事はまた、滞在許可証の出生地変更の件に対するデンマークのLars Løkke Rasmussen外相の反応についても言及し、いきさつを充分に理解し、台湾の人々の出生地が中国と記載されることを避けるための解決策を見つけることに前向きだとした。
「Berlingske」は1749年に創刊されたデンマーク最古の新聞。週間発行部数は30万部を超え、デンマークや欧州諸国の世論に大きな影響を与えている。