呉釗燮外交部長(=外務大臣)が19日、ニュージーランドのネットメディア「newsroom.」の政治担当記者でコラムニストのSam Sachdeva氏のインタビューに応じ、台湾とニュージーランドとの関係、台湾海峡とインド太平洋地域の情勢、台湾が「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」加入を目指す取り組みなどについて語った。インタビューの内容は22日に「Taiwan wants NZ support to counter ‘expanding authoritarianism’」(権威主義の拡張に対抗する台湾、ニュージーランドの支持を期待)のタイトルで配信された。
呉外交部長はまず、台湾とニュージーランドは自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値を共有しているほか、2013年に交わした「(ANZTEC)」が友好関係の良好な基礎になっていると指摘。また、近年中国が太平洋地域の安全保障を脅かしていることで、台湾とニュージーランドが協力して権威主義拡張に対抗していくことが双方にとって共通の利益になっているとの見方を示した。呉外交部長は、中国による海外での情報操作もニュージーランド在住の華人に深く入り込んでいるとし、そうした状況への対応経験についても台湾はニュージーランドの非政府組織(NPO)や学術機構との共有が可能であることを説明した。また、先住民族問題や教育問題についても交流を強化出来る機会を探っていく考えを示した。
台湾のCPTPP加入問題について呉外交部長は、台湾がCPTPPの高い基準をみたすため経済や貿易面での改革に努める中、条件をみたさない中国が新会員の加入プロセスを主導することは台湾もしくはCPTPPのメンバーにとって不公平だと批判、CPTPPのメンバーは政治的考慮を排除し、申請国が条件をみたすかどうかだけに絞って加入を支持するかどうかの根拠とすべきだとし、ニュージーランドが公の場で台湾の参加を支持することに期待した。
中国が台湾侵攻に踏み切るタイミングについて聞かれた呉外交部長は、「戦争は間近に迫っているわけではないし、避けられないものでもない」とし、台湾としては引き続き責任感のある政策で台湾海峡の現状維持に努めるほか、自衛力を強化して中国による戦争発動を抑止していくとの考えを示した。
呉外交部長はまた、米国が米日比首脳会談や米日韓首脳会談、米英豪3か国による安全保障の枠組みである「AUKUS」などを通じて民主主義国の「同盟」を強化し、一方的な現状変更への反対、自由で開かれたインド太平洋地域ならびに台湾海峡も含む地域の平和と安定を維持することへの重視といった重要なメッセージを発信していることはいずれも中国への抑止力を高めるものだと評価した。
呉外交部長は、中国は今年1月、台湾海峡の中間線に隣接する飛行ルートM503を西側にずらしておく従来の措置を一方的に取り消したのに続いて、4月18日にはまたも台湾との協議を経ずに東に向かう(台湾の方向に飛んでくる)飛行ルートW122とW123の運用開始を宣言したと説明、「飛行の安全に著しく影響するばかりでなく、台湾の縦深防御を圧縮する」と批判した上で、理念の近い国々に対し、中国による飛行の安全の無視、台湾海峡の現状破壊などの行いを一斉に非難するよう呼びかけた。