蔡英文総統は9日、昨年末まで外務省に努め、2度の台湾駐在経験を持つ垂秀夫(たるみ ひでお)氏に「大綬景星勳章」を授与した。垂氏は外務省大臣官房長を経て、2020年からは駐中国大使を務めた。2023年12月に帰任し、外務省を退官。現在は立命館大学で教壇に立つ。台湾における日本大使館に相当する日本台湾交流協会台北事務所には、2001年からと2016年からの2回駐在した経験があり、台湾で幅広い人脈を持つ。
蔡総統は垂氏について「台湾にとって長年の良き友人であり、台日関係を深化させた重要な立役者でもある」と評した上で、「大綬景星勳章」の授与を通して、台湾の人々を代表して、垂氏の台日関係への卓越した寄与に感謝したいと述べた。蔡総統はまた、垂氏は外交官人生において台湾と深い繋がりを築き上げてきたと評価。東京での外務省勤務時代においても、2度の台湾駐在期間においても、外交官としてのビジョンを持って台日関係促進のため奔走し、現在の台日関係の基礎を築いたと称えた。蔡総統はその一例として、台湾と一緒になって日本政府に働きかけ、台湾人旅客へのノービザ措置を実現したことや、台湾と日本の青少年交流に尽力したことなどを挙げた。
垂氏は「大綬景星勳章」を受けたことに感謝した上で、昨年末、40年近く務めた外務省を退官したこと、現在は写真家として活動していることなどを説明した。また、外交官時代には、台湾や、蔡総統、総統府の邱義仁資政、外交部の呉釗燮部長(外相)など多くの友人と深い繋がりを持てたことに感謝した。
垂氏は、20数年前、不思議な縁に導かれて初めて台湾の土を踏んだこと、台湾で暮らし、働く中で多くの台湾人と出会い、親切にしてもらったことなどを振り返った。そして、「台湾での生活を通して、台湾と日本は心がつながっているということをはっきりと知った。双方とも自然災害が多く、また厳しい国際環境に直面しているが、常に互いに助け合ってきた」などと語った。そして、現在は写真家として、また立命館大学教授として働いているが、人生の第二のステージにおいても、台湾との縁を大切にしていきたいと述べた。
なお、垂氏は台湾駐在期間中、台北、新北、宜蘭など台湾北部を中心に撮りだめた写真があり、2018年には総統府の邱義仁資政の協力を得て、総統府で写真展を開催している。垂氏は、「今後は台湾南部でも撮影を楽しみたい」と意気込みを語った。