外交部外交及国際事務学院(外交部の教育機関。以下、外交学院)の呉志中院長(政務次長=副大臣と兼務)は10月30日、台北市大安区にある外交学院で、米ハワイのシンクタンク「イーストウエスト・センター」(East-West Center, EWC)との合同事業である2024年「太平洋島国青年リーダー育成計画(Pacific Islands Leadership Program with Taiwan、略称PILP)」の修了式及び歓送会を開催した。ツバル大使館や米国在台協会台北事務所(AIT。台湾における米国大使館に相当)などの外交使節や、立法院(国会)の盧県一立法委員(国会議員)、原住民族委員会の代表など、招きを受けた来賓らが、太平洋の島嶼国10か国からやってきた21人の受講生の修了式を見守った。「イーストウエスト・センター」の「太平洋島嶼国発展プロジェクト」の責任者であるメアリ・テレーズ・ハットリ博士も訪台し、式典に参加した。
呉院長は祝辞で、トンガ人文化人類学者兼作家のエペリ・ハウオファ(Epeli Hauʻofa)氏が名著『島々の浮かぶわれらの海』(Our Sea of Islands)で書いた「海は島々を結び付けるものであって、島々を分散させるものではない」という言葉を引用して、台湾、米国、そして太平洋の島嶼国の緊密な協力関係を強調した。呉院長はまた、太平洋地域の国々が気候変動、地域の安全保障、権威主義の勢力拡大などの脅威にさらされる中、台湾は米国及び太平洋地域の国々と団結し、協力するという揺るぎない決意を持っていると説明した。
続いて立法院の盧県一立法委員は、自分がルカイ族とパイワン族の血を引くことを紹介し、5つの台湾先住民族の言語で集まった人々にあいさつをした。盧立法委員はまた、自分は政治家になるまえ、先住民族の集落で医者をやっていたが、立法委員になって僻地にある先住民集落の医療レベルを拡大したいと考えたこと、台湾の先住民族と太平洋島嶼国の間で、オーストロネシア語族の文化や言語の交流を促進したいと考えていることなどを伝えた。
受講生の一人、マーシャル諸島のJasmine Myazoeさんは、太平洋の島国はいずれも「Big Ocean States(BOSS)」であり、気候変動が海洋諸国に与える影響は単に海面上昇にとどまらず、生態系への影響や食料安全なども含むと指摘。島嶼国の自然災害への強靭性を強化することは当面の急務であり、中華民国政府が長年このプロジェクトを実施してくれていることに感謝した。
フィジーから参加したAtama Tamaniloさんは、このプロジェクトは海外の友人を作り、自分の視野を広げる絶好の機会だと指摘した上で、中華民国政府と台湾の人々のホスピタリティあふれる待遇と、台湾の各領域での成果や発展に深く感銘を受けたと述べた。
外交学院が提供した多彩なカリキュラムや参観・訪問の手配に感謝するため、受講生たちは国別に分かれて自国の伝統舞踊を披露し、呉院長をはじめ、式典に参加した来賓たちに参加を呼び掛けた。外交学院が招いた台湾先住民族のダンスグループ「Te Natira’a」もタヒチアンダンスを披露して会場を盛り上げた。
この事業は、米国の元国務次官補(東アジア・太平洋担当)で、現在は国務副長官を務めるカート・キャンベル氏が2011年に提唱し、始まったもの。台米双方が太平洋島嶼国に共通する議題について、三者間の協力のプラットフォームを構築することを目指すのが目的。2012年には外交部外交学院と「イーストウエスト・センター」が覚書を締結し、2013年以降、合同事業として実施している。毎年、太平洋島嶼国から未来を担うリーダーたちが選抜され、「イーストウエスト・センター」がある米国ハワイと、外交学院がある台湾の2か所で約2か月間にわたる人材育成のトレーニングを受けている。受講内容は国際関係、地域の安全保障、環境のサステナビリティ、医療及び公衆衛生分野での協力、ジェンダー平等、オーストロネシア語族文化の普及など。現在までに太平洋島嶼国から197人の若者が参加。この地域で最も影響力を持つ若手リーダー育成プロジェクトの一つとなっている。