頼清徳総統は20日夜、台湾米国商会(AmCham Taiwan。台湾における米国商工会議所に相当)が主催する「謝年飯」(=謝恩晩餐会)に出席した。頼総統のほか、台湾米国商会のダン・シルバー(Dan Silver)理事長やアラスカ州のマイク・ダンリービー州知事らが出席した。頼総統にとっては総統就任後、初めての「謝年飯」となった。
頼総統は挨拶の冒頭で、台湾米国商会が長期にわたり米国と台湾の架け橋となり、米国の各方面に台湾の声を届ける一方で、台湾の政府に対しても産業発展に対する忌憚のない意見を提供してきたことに感謝した。
頼総統はまた、4年前にTSMC(台湾積体電路製造)がアリゾナ州への投資計画を発表したとき、当時としては外国企業による最大規模の対米直接投資と言われたが、TSMCは今月になって対米投資計画のさらなる拡大を発表し、当時の記録を塗り替えることになったと指摘。これは台湾と米国にとって共栄共存の発展が続いていることを意味するものだと述べた。米国が自国の製造業の活性化を図るため「再工業化政策」を掲げ、ハイテク産業におけるリーダーシップを維持し、世界のAI産業の中心になることを目指していることについて頼総統は、「台湾は米国にとって必要不可欠なパートナーだ。米国はチップの設計分野でリードし、台湾は半導体製造分野で必要不可欠な重要な役割を演じている」と強調した。また、現政権は「半導体」、「AI」、「軍事産業」、「次世代通信」、「サイバーセキュリティ」の「五大信頼産業」の振興により次の経済発展を促進しようとしていることから、「台湾に投資するならいまだ」と呼びかけた。
頼総統は、地域ひいては世界の安全と安定を維持することは、台湾と米国の経済発展にとって必要不可欠な要素であると指摘し、トランプ米大統領が就任後、日本の石破茂首相と首脳会談を行い、その後発表した共同声明で台湾海峡の平和と安定に対する揺るぎない支持を示したことに感謝した。
頼総統は、権威主義の拡大に対抗するため、台湾が引き続き民主主義と自由の価値を守り、地域ひいては世界の安全保障において責任ある役割を果たすことを約束。さらに、現在台湾の国防予算がGDPに占める比重は約2.5%だが、特別予算の編成を優先することで、これを3%以上に引き上げることを目指していると述べ、今後も国防改革を進め、台湾の防衛力を強化し、アメリカなどの民主主義諸国との連携を強め、ともに地域の安定と繁栄を守っていくことを誓った。
頼総統はまた、台湾とアメリカが国防産業で連携を継続することを歓迎し、「心を一つにして力を合わせさえすれば、両国の国防産業のために(中国企業を含まない)『ノン・レッド・サプライチェーン(非赤供給網)』の構築がさらに進み、平和と繁栄を促進することができると信じている」と述べた。
なお、この「謝年飯」に出席した米国在台協会台北事務所のレイモンド・グリーン所長(米国の駐台大使に相当)は、TSMCの対米投資拡大計画が同社の対台湾投資に影響を与えるのではないかとの懸念について言及し、これは例えば小籠包(ショウロンポウ)の名店である鼎泰豊(ディンタイフォン)がアメリカに店舗を開くのと同じようなもので、鼎泰豊が米国に進出したからといって、それで永康街にある本店の客入りが衝撃を受けることはないと述べた。また、全世界がAI革命を推進する中、最先端チップに対する需要は小籠包と同じくらい大きなものになるだろうと表現した。