林部長は、米国のトランプ政権発足後100日が経過したことに触れ、トランプ政権の新政策はさまざまな側面を持つものだと指摘。貿易問題の背後にはグローバリゼーションへの再考と、トランプ大統領自身が目指す「アメリカ優先のグローバリゼーション」があり、相互関税はそのための目的であり、手段でもあるのだと説明した。また、多くの人は、トランプ大統領がこれから各国に交渉を迫るだろうと予想しているが、トランプ大統領自身は自分が世界秩序を維持していると考えているのだと述べた。
林部長はまた、グローバリゼーションの趨勢は中国の台頭を招き、とりわけ中国はWTO加盟後、ルールに基づく世界秩序に挑戦してきたと指摘。中国は国内の資源を総動員し、補助金を利用したりダンピングを行うなどして、「曲がりくねった道をまっすぐ走る」という戦略を実現しているが、これは当然ながら競争において不公平なことであり、米国に危機感を抱かせる原因にもなっていると述べた。
林部長はしかし、「これは台湾にとって挑戦であり、機会でもある」と指摘。政府は最近、トランプ政権との接触や対応を繰り返しているが、台湾と米国の意見は一致していると説明。多くの人が米国の関税交渉の第一弾のリストに台湾が含まれているかどうかを尋ねてくるが、その答えは「当然含まれている」だとし、ただ公表していないだけだと説明した。
林部長は交渉の具体例として、第一にTSMC(台湾積体電路製造)の対米投資拡大を、第二にアラスカからの天然ガスの調達と投資を、第三にAI用半導体チップの技術を挙げ、台湾は米国の歩調に合わせて「グローバリズムの勝ち組」に加わり、台湾が持つクラスターの効果を最大限に活用すべきだと指摘した。
林部長はさらに、この米中貿易摩擦の中で、最終的に成否のカギを握るのは新興技術、とりわけAIであり、台湾はAI用半導体チップやサーバーなどの分野で一定の役割を果たしていると強調した。
林部長は続けて、中国がいわゆる「邪悪な軸」、あるいは「レッドサプライチェーン」と呼ばれる独自の同盟を形成しているのに対抗するため、「ノンレッドサプライチェーン」の台湾と米国は「台米連合艦隊」を構築し、台湾による対米投資と、米国による対台投資の双方向のモデルを作り上げるべきだと主張。「(TSMCの対米投資拡大で)台湾の半導体産業が流出するという考えは間違いだ。米国市場は巨大であり、台湾にとっては世界を相手に戦う場所になる」と述べた。
最後に林部長は、安全保障戦略と貿易のバランスを取る必要があり、台湾とフィリピンはいずれも第一列島線に位置し、安全保障上、中国の脅威を受けており、米国の保護を必要としているが、安全保障上の同盟にもし経済的基盤が欠如していると、それは脆弱なものになってしまうとして、台湾とフィリピンの間に「経済回廊」を構築するなど、国ごとにさまざまな戦略的思考を持つ必要があると訴えた。