昨年7月に誕生した欧州議会の新たな政党グループ「欧州の愛国者(Patriots for Europe)」の議員一行が、今月20日から25日まで台湾を訪問した。メンバーは同政党の代表を務めるAnders Vistisen議員(デンマーク)を筆頭に、副代表のアントニオ・タンジェー・コレア議員(ポルトガル)、ゲオルク・マイヤー議員(オーストリア)、Anders Vistisen議員の政策顧問を務めるTobias Weische氏、同政党の政策顧問であるRodrigo Lopes Dias氏など。
一行は台湾滞在期間中、蕭美琴副総統を表敬訪問したほか、外交部の呉志中政務次長(=副大臣)が主催する宴会に招かれて出席した。また、立法院(国会)、経済部、大陸委員会、市民団体、シンクタンクの関係者らと幅広く交流し、台湾の政治・経済の現況と展望、インド太平洋の地政学的情勢、台湾と欧州連合(EU)の経済・貿易関係、科学技術のイノベーションなどのテーマについて意見を交わした。さらに、台湾海峡に浮かぶ離島・金門まで足を伸ばし、台湾海峡両岸の歴史、台湾の戦略的地位や文化の継承における重要性、それに台湾の多様な社会や民主主義の発展の背景について理解を深めた。
宴席を設けて一行をもてなした外交部の呉志中政務次長は、中国の脅威がエスカレートし、実際の武力攻撃には至らないいわゆる「グレーゾーン」行動が拡大する中、世界の民主諸国は一致団結して自由と民主主義の価値を守っていく必要があると訴えた。また、中国がしばしば経済的手段を政治目的に利用する中で、台湾企業による海外投資に占める対中国投資の比重は10年前の84%から、現在は約7%まで大きく低下していると説明。台湾は健全な民主制度と多様な社会を有し、ハイテク、医療、スポーツ、文化など各分野で力強い成長を遂げており、今後も台湾と欧州の交流を深化させ、ウィン・ウィンの実現を目指したいと述べた。
これに対してAnders Vistisen議員は、「欧州の愛国者」が重視する分野には、欧州全体の競争力の強化、より理性的で持続可能な環境・エネルギー政策の推進、そして違法移民の効果的な管理などがあると説明。欧州議会における第3会派として、これから重大な公共政策や関連の議論において、より積極的にその役割を果たしていきたいと意気込みを語った。また、アントニオ・タンジェー・コレア議員は、中国が欧州の重要なインフラへの投資を通じてその政治的影響力を拡大し、こうした動きがますます顕著になっていると指摘。自身の出身国であるポルトガルでは過去の経験を鑑み、台湾の民主主義と自由の価値の重要性を深く理解し、台湾の人々が自らの意思で自身の未来を決定することを支持するようになってきていると述べた。
欧州議会は今年4月2日に欧州連合(EU)の共通外交・安全保障政策(CFSP)と共通安全保障・防衛政策(CSDP)の年度報告書を賛成多数で可決した。この年度報告書には、中国が台湾海峡の緊張状態を高めていることや、中国による国連総会第2758号決議(いわゆる「アルバニア決議」)の曲解などへの懸念が盛り込まれたほか、EUに対して偽情報対策、外来勢力による浸透や干渉への対応といった分野で台湾との連携を強化するよう呼びかけるなど、欧州議会で党を問わず台湾支持のコンセンサスが形成されていることが示された。
中華民国(台湾)外交部は、欧州議会の各党派が具体的行動によって台湾支持の姿勢を示している状況について「心から感謝し、歓迎する」とした上で、「これまで築いてきた良好な関係を基礎とし、今後も欧州議会と各分野で協力と交流を強化し、民主主義の強靭化を図るとともに、堅実且つ互恵的な価値同盟のネッッとワークを構築していきたい」とコメントしている。