頼清徳総統は15日、終戦から80年を迎えるにあたり、自身のSNSを通して平和へのメッセージを寄せた。以下はその全文。
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80年前の今日、第二次世界大戦の一部である太平洋戦争は、連合国の一致団結した奮戦の末、終結を迎えました。この長きにわたる戦争が終わった後、全人類は戦後の未来に目を向け、復興と繁栄に力を注ぎました。そして、この残酷な戦争があったからこそ、世界の人々は「平和は何よりも尊く、戦争に勝者はいない」ということを深く理解しました。
第二次世界大戦は歴史における大惨事でした。それはごく少数の独裁者個人の覇権的野心、極端なイデオロギー、軍国主義の拡張によって引き起こされました。そして、複数の大陸にまたがる多くの国々が、無情にも戦火に巻き込まれることになりました。侵略に対抗するために、無数の尊い命が犠牲となったのです。
80年後の今日、終戦記念日を迎えるにあたり、私たちは自由と民主主義、平和と繁栄を、まるで呼吸をするかのように当たり前のものと感じると同時に、この痛ましい歴史を振り返り、そこから教訓を学ばなければなりません。
第二次世界大戦から得た貴重な教訓は、「団結すれば必ず勝利する。侵略は必ず敗北する」ということです。
どんな理由や口実であっても、いかなる政権も他国を侵略したり、他国の人々の自由と幸福を奪う権利はありません。自由を愛し、平和を重んじる国々こそ団結しなければなりません。揺るぎない決意と実力をもって、あらゆる拡張的、侵略的野心を打ち砕かなければならないのです。
なぜなら第二次世界大戦の全面的な勃発は、侵略者が独断で押し通したわけではないからです。侵略の野心に対する警戒心の欠如、さらには「妥協すれば平和が得られるだろう」という一方的な期待が、戦争の発動を目論む侵略者を暴走させ、取り返しのつかない戦争へと向かわせたのです。
80年後の今日、かつての枢軸国は、いまや自由と民主主義を実践し、市場経済と法の支配、人権を尊重する国々へと変わりました。そして、戦後は世界が目を見張るほどの進歩と繁栄を遂げ、国際社会から尊敬されています。これらの国々の戦後の発展は、自由と民主主義が人類文明にとって最も健全なスタイルであり、ひいては国際社会のために恒久の平和と繁栄の共通の基盤となっていることを証明しました。対立を乗り越え、互いに信頼を築くことによってこそ、共に未来を切り拓くことができるのです。
第二次世界大戦の終結から80年を迎えるにあたり、2つの物語を紹介したいと思います。
一つ目は、終戦後数週間たったある日のことです。日本軍の捕虜となっていた米国、オーストラリア、オランダなど連合国軍の兵士を乗せた輸送機が、台湾の嘉明湖(訳注:台東県海瑞郷の標高3,300mの高地にある)付近に墜落し、乗員全員が命を落とすという事故が発生しました。救助に向かったのは、降伏後も台湾に残っていた日本の憲兵や警察官、地元に住む台湾先住民族、それに閩南人や客家人を含む台湾人でした。彼らは一緒に山へ入り捜索を行いましたが、悪天候により不幸にも命を落としてしまいました。この輸送機墜落事故と山での遭難事故は合わせて「三叉山事件」と呼ばれています。
戦争が終わったばかりのその時期、人々は連合国か枢軸国の分け隔てなく、見ず知らずの命を救うために命がけで山を登ったのです。それは、すべての命が尊いものであるからです。
もう一つ重要なことは、今月初め、台湾の駐日代表である李逸洋氏が、初めて広島と長崎で開かれた平和記念式典に招かれ、世界各国の代表とともに犠牲者を追悼し、平和への祈りを捧げたことです。
かつて激しい戦いを繰り広げて侵略者と戦った連合国と、当時の交戦国が80年後の今、民主主義の盟友として肩を並べて腰を下ろし、平和の尊さと、平和への願いを示す姿は、民主主義国家間の友情、尊敬、そして団結を象徴するものとなりました。
侵略の野心に対しては、常に警戒を怠らず団結すること。それでこそ、私たちの日常を守ることができます。協力こそが、自由と民主主義の価値を永続させることができるのです。どんな脅威や挑戦に直面しても、私たちは肩を並べて立ちあがり、支え合わなければなりません。民主主義国家が協力し合うことで、私たちが大切にしている自由と平和を守り抜くことができるのです。
自由と民主主義は、無数の人々が犠牲になってきた歴史の中で得られたものです。私たちはそれを忘れてはならず、それが鳴らす警鐘を軽んじてはいけません。権威主義が再び集結し、拡張を試みています。こうした中で、私たちは第二次世界大戦の教訓をしっかりと胸に刻み、信念をもって団結し、侵略を許さず、自由と民主主義を守り抜きましょう。