中国で民主化を求める学生らが軍に鎮圧された天安門事件から29年を迎えた4日、蔡英文総統は自身のフェイスブックページに初めて、簡体字中国語(中国で使用される漢字)で書いた文章を投稿した。
「天安門事件29周年のこの機会に、中国人民に対するメッセージを伝え、台湾における民主主義発展の経験を共有したい」と投稿は始まっている。そして、「このサイトにたどり着くことが出来た中国のネットユーザーたちは皆、私のフェイスブックページが台湾の民主政治の縮図であることに気付くだろう。ここには批判の声もあれば、応援の声もある」、「台湾には『敏感詞(政治的に敏感な禁止ワード)』もなければ、ウェブサイトの検閲もない。当然ながら『翻牆(何らかの手段を使い、中国当局が禁止する海外のサイトにアクセスすること)』の必要もない。これが私たちの生活スタイルであり、それが可能なのは、こうした生活スタイルを許容する民主制度がここに確立しているからだ」と説明している。
続けて、「過去数十年間、中国大陸は(天安門事件という)この歴史的悲劇の影から抜け出せずにいる」、「台湾もかつて228事件や美麗島事件といった政治弾圧が行われた」とした上で、「しかし、我々は歴史的責任を担い、真相の究明、そして被害者及びその家族の名誉回復と賠償に力を入れている」と説明した。なお、228事件とは1947年、国民政府が第二次世界大戦以前から台湾で暮らしていた人たちを武力で弾圧した事件。美麗島事件とは1979年、「党外人士」と呼ばれた多くの民主運動家たちが台湾南部・高雄で人権大会と抗議デモを行い、政府の弾圧を受けた事件。
そして、「私は心から信じている。北京当局が天安門事件を直視し、この事件に含まれる国家的暴力の本質を認めれば、天安門事件という不幸な歴史は、中国が自由、民主主義へ向かって歩み出すための基礎となるだろう」と期待を寄せている。
蔡総統は最後に、「いつの日か、中国のネットユーザーが『翻牆』という手段を取らなくても、自分のフェイスブックページを閲覧できる日が来ることを望む」、「台湾海峡両岸が、自由と民主主義という普遍的価値を共有し、双方の住民の相互理解と協力に、より大きな空間が生まれるよう期待している。これは双方の政府が実現に向けて努力すべき目標だ」とまとめている。