2025/05/02

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「憲法訴訟法」が成立、憲法解釈制度が大きく変化

2018/12/19
立法院(=国会)は18日、「憲法訴訟法」を可決した。司法院(最高司法機関)の構成員である大法官が取り扱う審理・審査が全面的に司法化され、法廷での裁判が行われることになった。ドイツの違憲審査制が導入されるなど、憲法解釈制度が大きく生まれ変わる。写真は新たな制度について説明する司法院の呂太郎秘書長。(中央社)
立法院(=国会)は18日、「憲法訴訟法」を可決した。司法院(最高司法機関)の構成員である大法官が取り扱う審理・審査が全面的に司法化され、法廷での裁判が行われることになった。これは、台湾の憲法解釈制度が大きく生まれ変わることを意味する。新たな制度は、準備に十分な時間を与え、必要な関連措置を整えるため、公布から3年後に施行される。
 
大法官が取り扱う審理・審査について規定した「大法官審理案件法」は1993年2月3日に改正されたもので、施行からすでに25年が経過している。規定の内容は非常に簡潔で、実際の運用にそぐわなくなっている。このため今回、全面的な制度改革が行われることになり、法律名も「憲法訴訟法」に改められた。
 
法改正の重点は次のとおり。
(1)大法官が取り扱う審理・審査が、全面的に「司法化、裁判化、法廷化」する。
(2)「違憲審査制」の導入。
(3)アミカス・キュリエ(個別事件の法律問題について、裁判所に情報または意見を提出する第三者。法廷助言人)制度を導入し、広く意見を求める。
(4)違憲審査の手続きを公開且つ透明化する。
(5)違憲審査の表決のハードルを引き下げ、審査の効率を向上させる。
(5)総統・副総統弾劾決議の審査規定を明確に定める。
 
「憲法訴訟法」の規定によると、司法院大法官によって構成される大法官会議(憲法法廷)は、法令や規範が憲法に違背していないかの違憲審査を行うほか、政府機関の衝突、総統・副総統の弾劾決議、違憲政党の解散、地方自治の保障、法解釈及び命令の統一などの審理・審査を取り扱う。従来と大きく異なるのは、審理の結果が裁判方式で宣告されること。
 
次に大きく異なるのが「違憲審査制」を導入したことだ。台湾では長い間、裁判所が下した判決は、大法官会議の対象となりえず、国民の権利保障に欠陥をもたらしていた。「憲法訴訟法」では、大法官による違憲審査の効力が終審裁判所の判決にも及ぶようにし、国民に完全で抜け穴のない基本的権利の保障を提供することになる。今回の法改正では、ドイツの違憲審査制が導入され、法定の手続きに基づいて終審裁判所まで持ち込んだ権利救済案件で不利な判決が確定した場合でも、それが憲法に違反すると考えるなら、大法官会議に持ち込んで違憲宣告の判決を得ることも可能になる。但し、違憲審査は審級制度の第四審ではなく、一種の特殊な救済制度と位置付けられる。
 
今回の法改正で最も重要な精神が、公開・透明化である。大法官会議で審理する案件は、客観的な法秩序によって保護され、憲法の価値と公益性を持っていなければならない。このため「憲法訴訟法」では、大法官会議に持ち込まれた案件について、公式サイトでその要請書と答弁書を公開するよう規定している。
 
また、今回の法改正では違憲審査の表決に関するハードルが引き下げられ、審理の効率が高めることになった。現行法では、審査の対象となる法律が憲法に違背しているかどうか、大法官が判決を下す場合、出席者の3分の2以上の同意が必要と、高いハードルが設けられている。しかし、実際の運用では3分の2以上の同意を得ることは難しく、法解釈が成り立たないケースも多い。このため、今回の法改正では表決のハードルが合理的な基準まで引き下げられ、同法で別途規定している以外は、大法官の総数(規定では15名)の3分の2以上が評議に参加し、大法官の総数の過半数の同意で、違憲あるいは合憲の判決を下すことができることとした。
 
大法官会議に対する法解釈の要請は、立法委員(=国会議員)も行うことができるが、そのハードルも合理的なレベルに引き下げられた。現行法では立法委員の総数の3分の1の提案が必要とされているが、新たな「憲法訴訟法」ではこれが4分の1に引き下げられた。これにより、国会での少数意見が、大法官会議の審理対象として採用されやすくなる。
 

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