2019年1月1日、中華民国(台湾)では最低賃金と総合所得税の控除額拡大など、様々な新制度がスタートした。
労働者・生活
●総合所得税新制度(5月の確定申告時から適用)
1、最高税率を40%に引き下げ。
2、基礎控除額を12万台湾元(約42万日本円)に引き上げ。
3、給与所得と障害者特別控除額を20万台湾元(約70万日本円)に引き上げ。
4、就学前の子どもに係る特別控除額を子女1人につき12万台湾元(約42万日本円)に引き上げ。
5、年収40万8,000台湾元(約143万日本円)以下の独身者、夫婦連結申告で年収81万6,000台湾元(約286万日本円)以下、かつ子女のいない家庭、夫婦連結申告で年収123万2,000台湾元(約432万日本円)以下、かつ2歳から5歳の子どもを2人養う4人家族は所得税を免除。
●「基本工資(最低賃金)」の引き上げ
最低賃金(月給)が2万2,000台湾元(約7万7,200日本円)から2万3,100台湾元(約8万1,050日本円)に引き上げられ、労働者180万1,400人が恩恵を受ける。時間あたりの最低賃金(時給)は140台湾元(約491日本円)から150台湾元(約526日本円)へと引き上げられ、本国人労働者45万6,000人が恩恵を受ける。最低賃金の調整に合わせ、退職金積立金の標準報酬月額等級表の第19級は2万3,100台湾元へ、労働保険加入報酬月額等級表の第1級も2万3,100台湾元へと修正された。
●1,039万人の労働保険料率が引き上げ
労働保険普通事故保険料率が9.5%から10%(就業保健料率1%は含まず)に変更。労働者1,039万人に影響するものと見られる。
●労働災害保険料率の調整
労働災害保険は業種別労災保険料率と通勤中の災害保険料率の2種類。業種別労災保険料率は0.01ポイント引き下げられ、0.15%から0.14%に変更。通勤中の労災保険料率は単一の料率を採用して0.07%を維持。労災保険料率はこの2つを合わせて平均0.21%に。
●上場企業、店頭公開企業の給与完全透明化
上場企業及び店頭公開企業の財務諸表に「非担任主管職務全職員工(管理職以外の全職員)」の給与情報を追加。月給が4万台湾元(約14万300日本円)に達していない、もしくは年間の給与が一定の基準に達していない企業は年次報告書などで「低賃金」の合理性を説明しなければならない。
交通
●交通違反の摘発を実名制に
交通部(日本の国交省に類似)が交通違反の市民による摘発規定を改正。摘発する場合は実名、国民身分証、「統一編号」(台湾の営利事業者に政府が与える識別番号)の申告が必要に。みだりな摘発防止へ。
●複数の「大型」自動二輪による単一停車枠への駐車が可能に
交通部が「大型重型機車」(排気量250cc以上の自動二輪車)駐車規定を改正。小型自動車1台用の路上駐車枠(白枠)に1台以上の「大型重型機車」を停められるとの規定を追加し、駐車スペースを有効に活用。
医療と保険
●C型肝炎治療の新薬を健康保健適用に
C型肝炎と診断された場合の抗ウイルス新薬治療に健康保健を適用する。治療経費は65億台湾元(約228億日本円)に拡大。向こう7年間、毎年4万人が恩恵を受けられるようになり、2025年までにC型肝炎の撲滅を目指す。
環境保護
●「海岸清掃と里親」サイトがスタート
行政院環境保護署(日本の環境省に相当)による「海岸清掃・里親システム」サイトがスタート。希望者は単一窓口となるウェブサイトを通じて海岸清掃活動への参加や海岸の「里親となる」(特定の海岸の清掃活動に定期的に参与する)ことを申請できるようになった。海岸線の管理が様々な部署で行われていることから、希望者が活動参加などを拒否される状況を改善。サイトでは、連絡窓口や収集したゴミの処理方法など、海岸清掃と環境保護に関する情報も提供する。
●7大国際商港では低硫黄燃料使用
外国籍の船舶及び国際航路を航行する台湾の船舶が中華民国(台湾)の高雄、台中、基隆、台北、花蓮、蘇澳、安平の「7大国際商港」に入港する際には硫黄分0.5%以下の低硫黄燃料か、同等のCO2削減効果のある装置、代替燃料の使用を義務付け、硫黄酸化物など大気汚染物質の排出を減らす。
証券投資財テク
●台湾株式市場の振替出勤日取引を撤廃
銀行業が週末に振替出勤となった場合、証券市場と先物市場の取引は行わず、受け渡しも行わない。
●越境Eコマースにクラウドでのレシート(領収書)発行を義務付ける。1年間の周知・準備期間を設定。
●「無存摺存款」(通帳無しで預金=振込み。台湾では無料)での個人データの申告義務付け
金融機関のカウンターで「無存摺存款」を行う際、金額が3万台湾元(約10万5,200日本円)以上の場合は申請者の個人データの申告が必要に。
●保険会社が投資型の保険商品を70歳以上の人に販売する場合、録音と録画を義務付ける。
●発行株式の30%以上を外国人投資家が所有している会社に英語での財務諸表を義務付け
発行株式の30%以上を外国人投資家が所有している、もしくは資本金が100億台湾元(約351億日本円)以上の上場企業・店頭公開企業には英語版の財務諸表、年次報告書、株主総会招集通知・議事録の作成を義務付ける。
●海外で展開する台湾企業のUターン投資行動方法がスタート
海外で展開する台湾企業が台湾でUターン投資をする場合、その投資額が一定の規模に達し、本国人労働者の雇用が一定の人数に達するなどの条件を満たせば、雇用可能な外国人労働者の割合を10%拡大する。上限は40%。