国際共同プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」による史上初のブラックホールの撮影成功を受け、科技部(日本の文部科学省に類似)は11日、ニュースリリースを発表した。科技部は、政府の科学研究に対する長期的な経費支援の下、台湾の科学者たちが今回、おとめ座M87銀河の中心にある巨大ブラックホールの観測に成功したこと、科技部が2006年より、台湾の研究チームが大型の国際プロジェクトに参加できるよう支援を行ってきたことなどを伝えた。
科技部は多様な研究を奨励し、潜在力のある新たな研究課題を発掘して研究を行うことができるよう、物理学部門だけで毎年約40件以上の天文観測や理論など、個人型の研究計画を助成してきた。この経費は毎年約6,600万台湾元(約2億3,800万日本円)に達している。これにより、数多くのすぐれた天文研究者を輩出し、天文研究分野で画期的な新技術を開発し、台湾の科学技術の土台を強化している。
また、科技部は台湾の科学者が世界レベルの大型プロジェクトに参加できるよう、毎年約7,000万台湾元(約2億5,300万日本円)を拠出し、中央研究院などの天文研究チームを支援している。これにより台湾は、世界最大、最高性能の電波望遠鏡「アルマ望遠鏡(正式名称はアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」の観測計画にも参加。この計画で台湾は経費を拠出するほか、アルマ望遠鏡の建設と運転にも参加し、台湾の天文学者がアルマ望遠鏡の使用権を取得できるようにしている。
その結果、台湾のアルマ望遠鏡研究チームは100本以上の論文を発表。アルマ望遠鏡は今回のブラックホール観測でも主力望遠鏡の一つとして活躍した。台湾の天文研究チームはこのほか、北極圏内であるグリーンランドにもグリーンランド望遠鏡(GLT)を設置し、酷寒の気候でも運転できるよう、必要な改造を行った。2018年4月には「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の観測計画に加わり、アルマ望遠鏡と共にブラックホールの合同観測を行った。史上最長の基線を持つ干渉計として、今後も星系の中心にある超重量級のブラックホール研究分野で画期的な成果を得られるものと期待されている。