台湾北東部・宜蘭県の南方澳漁港で1日、漁港にかかる全長140メートル、アーチ状の南方澳大橋が崩落した。走行中の石油タンクローリーが落下したほか、付近の漁船が崩落した橋の下敷きになり、多数の漁民が海に投げ出された。現在、5人の死亡が確認されている。
落下した石油タンクローリーは、約2万リットルの石油を橋の向こうにあるガソリンスタンド「漁友漁船加油站」に運ぶ途中で事故に遭遇した。運転士は胸を強く打ち、足の骨を折るなど重傷だが、意識ははっきりしており、現在地元の病院で治療を受けている。
宜蘭県消防局は1日午後11時18分、南方澳大橋の先にある豆腐岬の橋の下で、29歳のインドネシア人労働者Wartonoさんの遺体を発見した。同11時34分にはその付近で44歳のフィリピン人労働者Serencio Andree Abreganaさんの遺体を、日付が変わって2日午前1時31分には32歳のインドネシア人労働者Ersonaさんの遺体を発見した。2日午前8時45分には47歳のフィリピン人労働者Impang George Jagmisさんの遺体が、午後2時27分には28歲のインドネシア人労働者Mohamad Domiriさんの遺体が発見され、2日午後6時までに5名の死亡が確認されている。
交通部(日本の国土交通省に類似)の林佳龍部長(=大臣)は当日直ちに現地入りし、事故原因の調査に当たるため、特別チームを発足したことを明らかにした。また、原状回復に協力することを約束するとともに、現在は人命救助を優先し、最大限のスピードで救出活動に当たりたいと述べた。この事故の影響で地元漁民の生活に支障が出ることが懸念されていることについて林部長は、行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)と話し合い、一定期間、事故の影響で漁業が出来なくなった漁民に対し、損失を補填できるよう協力する考えを示した。
蔡英文総統も1日午後、宜蘭県蘇澳に設置した「中央災害応変中心前進協調所」を訪れて報告を聴取し、捜索活動の現状について把握した。蔡総統は、関連機関が人員を最大限に動員し、行方不明者の捜索に全力で当たること、漁民に協力して漁船の出入りに支障を与える障害物を速やかに撤去すること、事故原因を十分に解明することなどを指示した。また、交通部と各地方自治体が協力し、台湾各地の老朽化した橋梁を検査し、安全に問題がないかを確認するよう求めた。
崩落した南方澳大橋は1998年6月20日に完成。全長140メートル、幅15メートル。海面から橋までの高さは18.5メートル、アーチの最も高い部分は25.27メートルの位置にある。台湾唯一の単弦アーチ橋で、アジア初の交差型単弦アーチ橋でもある。