行政院農業委員会林務局(日本の林野庁に相当)が20日、社団法人台湾野湾野生動物保育協会(WildOne Wildlife Conservation Association)と協力協定を結び、官民が力を合わせて台湾東部初の大規模な野生動物救護センター、「東部野生動物救傷中心」を設置することが決定。これにより、台湾の北部・中部・南部・東部の動物救護ネットワークが完成したことになる。「東部野生動物救傷中心」が正式にオープンするのは8月15日だが、実際の運営はすでに始まっている。
協定の署名に立ち会った行政院農業委員会(日本の農水省に相当)の黄金城副主任委員は、台湾が野生動物の保護を推進していく上でこの「野生動物救傷中心」が持つ意義を強調。台湾東部は野生動物が豊富ながら、病気や傷を負った動物が見つかった場合、これまでは南なら屏東県の国立屏東科技大学へ、北なら台北市の台北市立動物園へと送るしかなかったのだという。このため黄副主任委員は、東部に同中心が出来ることで野生動物の救護がより多く成功し、救われた動物を自然に返すこともこれまで以上に順調に行われるだろうと期待した。
林務局の統計によれば、過去5年間に救護された絶滅危惧種とセンザンコウは合わせて576頭。治療ならびに自然界での生活に慣れさせる訓練を経て、半数以上の304頭を野生に戻すことが出来た。花東地区(東部の花蓮県と南東部の台東県)で救護される動物の数も、2015年の143頭から2019年の319頭へと過去5年間増え続けている。
今回、官民が野生動物の救護で協力していくことになった意義について、林務局の林華慶局長は、動物保護で先進的な国の経験を参考にして全ての人々の参与を促していくことだと指摘。また、台湾野湾野生動物保育協会の綦孟柔理事長は、官民が協力することが人々の生態系に対する責任感につながるよう期待した。
綦孟柔理事長によれば、「東部野生動物救傷中心」には現在獣医師を2名配置。いずれも国立屏東科技大学や金門野生動物救傷協会で勤務した経験豊富な医師で、昨年花蓮県の南安瀑布の近くで母親とはぐれて見つかったタイワンツキノワグマの幼獣(子熊)を保護し、自然界に戻したケースにも実際に参加していたという。また、同中心での救護件数が今後増えていくようならば人員枠の拡充も検討する。
花蓮県と台東県の住民が救護の必要な野生動物を見つけた場合は、地元の自治体か台湾野湾野生動物保育協会に直接連絡すればよい。なお、花東地区で救護される動物には鳥類、猛禽類、センザンコウなどが多いということ。