中国の軍機が台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に度々侵入する中、空軍嘉義基地を拠点とするF-16V戦闘機は重要な防空任務を担う。中華民国空軍は5日、12機のF-16Vを滑走路に結集、「エレファントウォーク」と呼ばれる訓練を初めて実施して空軍の力を大いに示した。「エレファントウォーク」とは複数の航空機が集合し、隊列を組んで滑走路を走行するもの。
近年、台湾南西の防空識別圏への中国軍機の侵入が相次いでいるほか、軍機が「台湾海峡中線」(台湾海峡中間線)を越えることも多い。また、台湾南東の海域・空域に深く入ってくることもあり、地域の平和と安定が深刻に脅かされている。国防部(日本の防衛相に相当)の統計では、昨年台湾の防空識別圏に入るなどした中国の軍機は延べ約960機に及ぶ。
空軍の戦力を示すため、空軍司令部は5日午前、嘉義基地でF-16Vを使った緊急離陸や「エレファントウォーク」などの演習を行った。空軍がF-16Vを使った「エレファントウォーク」を対外的に公開したのは初めて。また、価格1,000万台湾元(約4,130万日本円)だという「ヘルメット装着式統合目標指定システム(JHMCS)」も披露した。
「エレファントウォーク」は本来米国空軍の訓練項目のコードネームの一つ。第二次世界大戦の時期、大量の軍機を短期間で一つの飛行場から連続で離陸させたことに由来する。現在までこの呼称が使われており、その目的は「戦力の誇示」。大量の軍機が一斉に出撃出来る体制を準備せねばならないため、可用性、戦力、兵力、戦備を常にそろえられる力量があることを意味する。米国空軍は今もたびたびこの「エレファントウォーク」で戦力を誇示、時には異なる型式の軍機を組み合わせて行うこともあるという。
「ヘルメット装着式統合目標指定システム」は昨年11月18日、F-16Vの部隊結成式で初めて公開され、今回再びこの最新のテクノロジーを結集した先進的なヘルメットが披露された。空軍は「鳳展専案」(鳳展プロジェクト)をコードネームに、1,100億台湾元(約4,550億日本円)を投じて米ロッキード・マーティン社と漢翔航空工業股份有限公司(AIDC)に既存のF-16A/B戦闘機141機をF-16V(近代化改修型)にグレードアップするプロジェクトを発注。すでに改修を終えた一部の納入が始まっている。