権威主義時代の国家による不法行為を認め、政治的迫害(白色テロ)などで被害を受けたいわゆる「政治受難者」の名誉を回復する式典「『誌過去、致未来』-平復国家不法及名誉回復証書頒発聯合典礼」が8月31日、内政部と法務部の主催、国家人権博物館と二二八紀念基金会の協力の下、台北市内で開かれた。
この式典では、1947年の二・二八事件発生後、台湾中部で最大勢力を誇った青年学生組織「二七部隊」に関わったとして逮捕された呉金燦さん(故人)、1950年代に思想や言論に問題があるとして逮捕された淡江大学文学院元院長の紀秋郎さん(故人)、1988年の台湾農民運動(いわゆる「520事件」)のデモ現場に居合わせて逮捕されたトラック運転手の邱煌生さんに対して、頼清徳総統から名誉回復証書が授与された。呉金燦さんと紀秋郎さんに関しては遺族が代理で受け取った。
また、式典には国家人権委員会の陳菊主任委員(監察院院長を兼務)、行政院の卓栄泰院長(首相)、移行期正義の業務を担当する6つの省庁の代表らがすべて出席。国家の力をもって移行期正義プロジェクトを継続的に推進し、被害者の名誉回復を重視するという政府の姿勢が示された。
国家人権委員会の陳菊主任委員はこの式典で、白色テロを代表する殺人事件で、現在も犯人が分かっていない「陳文成殺人事件」(1981年)と「林義雄台湾省議会議員宅一家3人殺人事件」(1980年)について言及。「この2つの事件の真相が解明しない限り、台湾の『移行期正義』が完成したとは言えない。もし自分たちの世代が生きているうちに解決することができなければ、今後真相が解明される機会はさらに少なくなってしまう」と憂慮を示し、頼清徳総統の指導の下、被害者遺族のためにもこの2つの事件の真相をぜひ解明して欲しいと訴えた。
これに対して頼総統は、「真相が明るみになることで初めて和解が生まれる。これはどの事件にも言えることで、陳菊主任委員が言及した2つの事件も当然これに含まれる。まだ足りていない部分について、政府は引き続き努力していく。あの時代、どんな場所で発生した不幸な事件も、真相を明るみにすべきだ。そうしなければ濡れ衣を着せられた人たちやその家族に申し訳が立たない。誰の目にも事実が見えるようにすることで、本当の意味で人々を団結させることができる」と述べた。
頼総統はまた、行政院(内閣)の下に「推動転型正義会報」がすでに設置され、この日の式典にも行政院長および6つの関連省庁のトップや職員が出席していることを踏まえ、「これは政府が移行期正義を重視していることを意味している。自分は、皆が移行期正義に関する業務を遂行するという決意を持っていると信じている」と述べた。頼総統はさらに、各方面の力を結集して一致団結し、台湾の民主的で自由な生活方式を守り、台湾の民主主義を築いてきた先人たちの犠牲を決して無駄にはしないことを約束した。
行政院の卓栄泰院長によると、2022年に任務を終えて解散した「促進転型正義委員会」(移行期正義促進委員会)が行った「司法の不法行為」に関する権利回復業務は5,983件だったが、その後の2年間で政府はさらに「司法の不法行為」について1,891件、「行政の不法行為」について2,023件の権利回復業務を行った。また、権利回復基金会が発行した名誉回復証書は2,620枚、支払った賠償金は47億台湾元(約214億日本円)に上っている。