「求籤(おみくじを引くこと)」は民間の重要な風習。台湾北部・新北市ではこのほど、市内の大規模な廟宇(神社仏閣)における「籤詩(くじを引いてからもらう紙の『おみくじ』)」の統計を取って分類、様々な異なる「籤詩」及びくじを引く際に用意すべきお供え物とその手順を紹介し、人々の参考に供している。
新北市の大規模な廟宇で最も多く使用されている「籤詩」は「六十甲子籤」で別名「媽祖籤」。「媽祖さま」は道教の女神で、元々航海や漁の守り神だったが、台湾では様々な願い事を受け入れる神様として広く信仰されている。例えば同市三峡区の興隆宮、板橋区の慈恵宮、新荘区の慈祐宮などの媽祖廟ではいずれもこの「籤詩」が使われている。参拝する場合のお供え物は果物の他、「媽祖さま」が最も好むお茶、香りの強い花、中華風の焼き菓子、「紅亀粿(蒸した赤色の大福もちのようなもの。亀の甲羅のように加工されている)」なども良い。また、各地の「土地公廟」でも「六十甲子籤」が使われる。「土地公」は福徳正神とも呼ばれる。地方の末端行政単位での神で、その土地を守るとされる。お参りでは「土地公」の好きな「発粿(もち米などで作った蒸しパン状のもの)」、「麻糬(お団子のようなおもち)」、「花生糖(アメでピーナッツを固めたもの)」、「米荖(もち米の粉をこねて油で揚げ、水あめにつけてゴマなどをまぶしたもの)」などが良い。
二番目に多く使われているのは「雷雨師一百籤」。雷雨を司る「天仙雷雨師」が占うもの。「関聖帝君(三国時代の関羽)」を主に祀る廟で広く使用される。別名「関帝籤」。統計によれば、「雷雨師籤」における「吉」の割合は50%以上であるのに対し、「凶」は10%にすぎず、「吉」のくじを引ける確率がかなり高いという。石門区の代天府聖明宮、新荘区の武聖廟、九份(瑞芳区)の聖明宮などではいずれも「関聖帝君」を祀っている。参拝しておみくじを引く場合には、三杯のお酒と三杯のお茶をお供えし、「関聖帝君」のご加護を求めて「凶を吉に転じる」と良い。
第三位は「観音一百籤」。よく見られるのは主に観音菩薩を祀っている仏教のお寺とお宮で、参拝する際には清水と花、果物を用意すると良い。
おみくじを引く際には、お伺いを一度立てるごとにくじを一度引くのが原則。くじを引かせてくれるよう神様にお願いしてから、長い棒状のくじの入った筒を振り、最も高く突き出たくじを引く。それから「筊杯」と呼ばれる占いの道具で、三度「聖筊」という形を出して神様に確認してから紙の「籤詩」をもらう。一部の廟宇では特殊な「籤詩」を使っている。例えば淡水区の縁道観音廟には独特の「384籤」、通称「諸葛神算神籤」がある。おみくじを引く人は三本のくじを引き、易経の六十四卦及びそれぞれの卦の六つの「変爻(卦の組み合わせによる変化)」に基づいて「籤詩」を受け取る。永和区保福宮及び樹林区の済安宮の「保生大帝六十籤」、三峡区の長福厳及び淡水区の清水厳が使う「清水祖師籤」などはいずれもそれぞれが祀る神様に応じた専門的な「籤詩」である。
台湾道教会の理事長を務める邱天相大法師によれば、各種の「籤詩」には通常、「シークレット版」の「籤王」が存在する。「籤王」を最も多く引き当てるの人は二種類で、一種類は運勢が最も良い人。しばしば善行を施し、多くの功徳を積んでいる。神様は「籤王」を引かせて、こうした人の勢いをさらに強める。もう一種類は運勢がひどく劣っている人。神様は「籤王」を引かせて悪運の到来をあらかじめ知らせ、こうした人が「凶」を「吉」に転じ、災難を避けられるよう協力するのである。
新北市民政局宗教礼俗科の藍品畯科長は、「おみくじを引くことは神様と人々がコミュニケーションをとる方法だが、一つの参考にすぎない。様々な事柄の最終的な成否と未来の方向は、あくまで自らの手に握られている」と話している。