2025/05/12

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台大教授、ブラックホール情報パラドックス解決に一石

2017/01/25
国立台湾大学(台湾北部・台北市)天文物理所の陳丕燊(Pisin Chen)教授はこのほど、フランスの学者と共に、レーザーとナノ技術を利用して「アナログブラックホール」を創り出すことで、約40年前から論争の対象となっている「ブラックホール情報パラドックス」の解決に一石を投じる内容に論文を発表した。(国立台湾大学提供、中央社)
国立台湾大学(台湾北部・台北市)天文物理所の陳丕燊(Pisin Chen)教授はこのほど、フランスの学者と共に、レーザーとナノ技術を利用して「アナログブラックホール」を創り出すことで、約40年前から論争の対象となっている「ブラックホール情報パラドックス」の解決に一石を投じる内容の論文を発表した。
 
イギリスの著名な論物理学者、スティーヴン・ホーキング氏は1974年、一般相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論により、「ブラックホールの蒸発理論」を発見。その後の40年余りにわたり、物理学の世界では「ブラックホールの蒸発に伴う情報喪失のパラドックス」について激しい論争が繰り広げられている。
 
この論争の解決に一石を投じるため、陳教授はこのほど、フランスの公立高等教育・研究機関であるエコール・ポリテクニーク(理工科学校)が設立した国際ゼタワット・エクサワット科学技術センター(IZEST)のジェラルド・ムールー(Gérard Mourou)研究員と共に、新たな実験構想を提示した。これは、高強度レーザーとナノ技術を利用して「アナログブラックホール」を創り出し、ブラックホール蒸発の末期の状況を再現するというもの。
 
研究チームによると、ナノ技術の運用により、密度が徐々に高くなる薄膜ターゲットを作りだすことができる。超高強度レーザーを薄膜ターゲットに照射すると、薄膜ターゲットは瞬時にプラズマに変わり、且つプラズマミラーを形成することができる。
 
レーザーとプラズマミラーが薄膜ターゲットの中にある、密度がやや高い場所に達したとき、そのスピードが徐々に加速するが、レーザーが薄膜ターゲットを通過すると、プラズマミラーの形成も突然停止する。研究チームによると、これはブラックホールの蒸発が最後まで進み、完全に消失する現象と同じだという。
 
陳教授が執筆した論文「Accelerating Plasma Mirrors to Investigate the Black Hole Information Loss Paradox」は、すでに米物理学会が発行する学術雑誌で、物理学全領域を扱う速報誌『Physical Review Letters』において編集者の推薦論文に選ばれている。米物理学会のウェブマガジン『Physics』でも、23日に論評が掲載された。
 
陳教授らはすでに国際チームを結成しており、この理論を使って実験を行う準備をしている。台湾、フランス、日本(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学研究部門関西光科学研究所)、中国大陸(上海交通大学)などの関連の研究チームが実験の実施に賛同している。
 

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