離島・金門県にある金門国家公園では2015年11月、同県金沙鎮東沙尾一帯で猛禽類3羽に発信機を取り付けて放した。その結果、そのうち2羽はそれぞれ8,000キロメートルあまりと1万1,000キロメートルあまりを飛んで昨年末に金門に戻ったことが確認され、台湾をめぐるこれらの鳥の「渡り」に関する謎が初めて解き明かされた。
この猛禽類はノスリ。発信機が取り付けられた翌年、2016年4月から相次いで北方に向かい、中国大陸の福建省、江西省、浙江省などを経てロシアのアムール州とサハ共和国まで移動した。夏を過ごす場所で2カ月から4カ月暮らし、9月からは再び南に移動を始め、1羽は8,000キロメートルあまり、もう1羽は1万1,000キロメートルあまりを飛んで金門にたどり着いた。
ノスリは冬に金門でよく見られる猛禽類。移動経路である東アジアは人口密度が高く、開発のペースも速い地区であり、その繁殖地及び移動で経由する生息地の状況を理解することは将来的なノスリの保護に役立つ。
北上する時のノスリは飛ぶことに集中しており、途中でどこかに留まることが少ない。逆に南下する際は飛んだり止まったりを繰り返すとのことで、こうした動きは天候と関係があると推測されている。悪天候や風向きが不利な場合、ノスリはあまり移動しない。また、春には北方での繁殖を急ぐため、途中で止まることが少ないとも考えられる。
金門県におけるノスリの活動範囲は小さい。それぞれが0.53平方キロメートルから1.96平方キロメートルの範囲で活動しており、海外の研究所がこれまでに確認した活動範囲よりずっと狭い。金門県におけるノスリは冬を越すだけで、繁殖に必要な縄張りを保つ必要がなく、その活動範囲は十分な食べ物さえあればよいものと考えられる。
金門県はアジア東部で鳥類が「渡り」を行うルート上にあるため、毎年様々な種類の猛禽類が移動の途中で金門県にやってくる。このため金門県で確認される猛禽類は大変多く、これまでに34種類以上が記録されている。