2025/05/18

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文化・社会

献体を描くドキュメンタリー、カナダの映画祭で上映へ

2017/04/28
HotDocsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭が27日よりカナダ・トロントで始まった。陳志漢監督が手掛けたドキュメンタリー映画『那個静黙的陽光午後(英語名:The Silent Teacher)』が、台湾の作品として唯一上映される。医学の研究のために遺体を提供する「献体」をめぐる愛と決意を描いた作品。(牽猴子行銷公司提供、中央社)
HotDocsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭が27日よりカナダ・トロントで始まった。陳志漢監督が手掛けたドキュメンタリー映画『那個静黙的陽光午後(英語名:The Silent Teacher)』が、台湾の作品として唯一上映される。この作品は、医学の研究のために遺体を提供する「献体」をめぐる愛と決意を描くもので、世界各国から集まった200以上の作品の中でも極めて珍しいテーマを取り扱っている。海外での上映は初めて。
 
陳監督はこれまで10年以上にわたって映画を撮り続けてきたが、長編ドキュメンタリーに取り組んだのはこれが初めて。初のドキュメンタリー作品にして大胆にも、中華社会ではタブー視されることが多い「生と死」をテーマに取り上げた。ストーリーは起伏に富んでおり、見る人々を深く感動させる。この映画を鑑賞した地元トロントのベテラン映画評論家は、同作品を高く評価すると共に、陳監督はこれをベースに劇映画としてリメイクするべきだと提案しているほどだ。
 
『那個静黙的陽光午後』を日本語にすると「あの静かな陽だまりの午後」といった意味になる。これは、私立輔仁大学(台湾北部・新北市新荘区)医学院が月曜午後に行う医学部生による遺体解剖の授業を指しているという。ちなみに、この映画の英語名は『The Silent Teacher』、つまり「静かなる師」である。
 
陳監督は、「献体者を『大体老師(=遺体先生)』と尊称する華人社会独特の文化を外国の人々に知ってもらいたい。これは西洋文化にはない観念だからだ。遺体に敬意を払うことは『迷信』から来るものではなく、『生命に対する尊重』であると信じている」と述べている。
 
台湾ではこのほど、1カ月にわたる上映期間が終わったばかり。興行収入は237万台湾元(約872万日本円)に達した。これはドキュメンタリー映画としてはなかなかの成績。
 
陳監督はこの映画を見た台湾の観客から、「死」とは何かを考えさせられ、家族とこのことについて話し合ったという感想を耳にした。「映画を見てとても感動した。死について一つの理解を得ることができた。自分も、死後は遺体を提供して『大体老師』になろうと決めた」と言ってきた高校生もいたという。陳監督はこのことについて、「自分は献体を奨励しているわけではない。映画を見た人が死について向き合い、どのようにして『よく生きる』かを考えてもらえたら」と話している。
 
陳監督はまた、「ドキュメンタリー映画は、台湾を国際社会に知ってもらうための良いきっかけになる。台湾は資金や人材の方面で、他国に及ばないところが多いかもしれないが、華人社会や華人地域において台湾は特に民主的な場所であり、ドキュメンタリー映画のテーマも自由に選ぶことができる。政府から制限を受けることもなく、かえって助成金を得ることさえできる」と説明。この映画も500万台湾元(約1,840万日本円)近い制作費用のうち、半分を文化部(日本の文部科学省に類似)と台湾北部・新北市の文化局と新聞局から助成金を得て完成にこぎつけたという。
 
HotDocsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭では現地時間4月27日、28日、5月6日の3回にわたって『那個静黙的陽光午後』を上映する。陳監督は27日と28日の上映後、会場からの質問に答える。
 

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