2025/06/19

Taiwan Today

文化・社会

広告ビジネスでも「善行」を、台湾の業者が中国大陸で創意を発揮

2017/09/01
女の子に触れると、「110番するよ!」などと声を発するポスター(左)と、中央をカッターで切ると血に見立てた赤い液体が滲み出すという、動物愛護を訴えるテープ(右)。通販の包装用だという。(左は「生米組成」提供、中央社/右は中央社)
台湾出身の広告業者、沈翔さんは自身のチームと共に、幼い女の子のイラストがプリントされたポスターをデザインした。このポスターは、軽く押すと「私に触らないで」という音声が出る。企業がこれに投資して製作、ポスターは地方にまで配布されている。
 
2004年に中国大陸での事業を始めた沈翔さんは台湾と中国大陸の広告事業ですでに30年あまりの実務経験を持つ。沈さんにとって広告は「人間性をもてあそぶもの」。沈さんは、広告はその時代の人々に影響を与えるに足る力を持つため、社会的な使命を負うべきだと考えており、以前「ソーシャルデザイン」の概念に啓発されたことで、先ごろ中国大陸の上海で「生米組成」というチームを結成した。「ソーシャルデザイン」とは、様々な社会問題をアイデアの元として、それに社会のリソース、企業の力を結び付けることで、各界が社会問題に目を向けるよう促すもの。
 
「生米組成」はこのほど、あるポスターを製作した。幼い女の子のイラストがプリントされており、その頭や手、胸などに触れると、ポスターは「触らないで、110番するよ」などと声を上げる。このポスターは「女童(女児)保護基金会」並びに企業とコラボレーションしており、ポスターの右上にはQRコードが印刷されている。スマートフォンでスキャンすると、女児保護のウェブサイトや、このポスターに協賛する企業のウェブサイトにつながる。消費者がその企業の製品を購入すれば、企業がさらに公益活動に力を入れるよう後押しすることになる。
 
中国大陸の人たちがセンザンコウを食べることが最近大きく報じられた。「生米組成」は、ネットショッピングなどで購入した商品の段ボール箱を閉じるためのテープ、「承諾膠帯(約束のテープ)」をデザイン。このテープには絶滅に瀕している動物の図案がプリントされており、箱を開けるためにこのテープの中心をカッターで切ると、赤色の塗料の入った小さな袋から液体が染み出して、「動物にとっての殺し屋にならないで」というメッセージが暗示される。
 
「生米組成」の運営方式はデザインのアイデアが決まってから顧客を探すというもので、「ソーシャルデザイン」の広告に対する企業の需要を切り開いている。沈さんによれば、この概念は業界の常識を3年以上リードするもの。消費者は「ソーシャルデザイン」を通じて問題を知り、知識を得ることになる。一方、その企業の商品が購入されれば利益は企業に戻り、善意が循環していくことになる。
 
「生米組成」を創設した沈さんは、クリエイティビティがいかにしてブランドと社会のために共有の価値を生み出すかに力を入れている。「生米組成」のネーミングについて、沈さんは、「中華民族の伝統において、米は様々な面で欠かせない。中華民族は米を各種の面白く、また実質的な効果を持つ食物に加工してきた。炊いたご飯、ちまき、酒、米線(ビーフンの太いもの)などであり、栄養を補給するだけでなく、おいしく満足できるものだ。この決して大きくないチームは、ブランド、メディア、技術などの『生米』をアイデアによって加工することに努め、様々な面白い製品を生み出している」と話している。
 
「約束のテープ」は2017年、フランスで行われる国際的な広告賞のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、「小型環境メディア」と「公共利益」の部門で銅賞を獲得した。
 

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