文化部(日本の省レベルに相当)は前身の行政院(内閣)文化建設委員会の時代に「家庭美術館-芸術家伝記双書」の編纂をスタート。これまでに台湾の美術家の伝記111冊、ベテランアーティストのドキュメンタリー32本を出版している。文化部は1日、今年度の新たな伝記とドキュメンタリーの発表記者会見を開いた。
文化部の鄭麗君部長(大臣)によれば、「家庭美術館双書」が記録する芸術家はいずれも台湾美術の開拓者で、その作品からはそれぞれの創作活動への情熱を感じることが出来る。鄭文化部長は、「時代的な伝承から創り出したり、時代的な制限を飛び越えたりして、当時の文化の新たな姿を生み出した」とこれらの芸術家を称えると共に、こうした創作エネルギーが台湾における芸術の歴史を一歩一歩前進させたのであり、これらの芸術家一人ひとりの歩みは全て台湾芸術史の縮図だと強調した。
今年の「家庭美術館-美術家伝記双書」は10冊。86歳の芸術家、劉国松さんの創作の歴史も含まれる。劉さんは1日、「台湾美術の発展に関わった者として1冊の伝記に書かれることは非常に光栄だ。台湾で長く暮らし、台湾の文化のために少しのこと、少しの貢献ができたのならば、この人生も無駄ではなかった」と話した。
劉国松さんは17歳の時に国民革命軍の遺族学校と共に1人で台湾にやって来て、その後は台湾省立師範学院芸術学科で学んだ。劉さんは中国絵画の伝承と現代化に強い使命感を抱いて抽象画と水墨画を主張、清朝末期から民国初め以降の中国美術の現代化に新たな道を切り開いた。そして1960年代には台湾、1970年代には香港、そして1980年代以降は中国大陸へとその影響を広げた。千年の歴史を持つ水墨画の世界の山水を宇宙の風景に高めたと評価されている。
また、79歳の芸術家、陳輝東さんは今回伝記にまとめられた10人の芸術家の中で最も若い。陳さんは、同双書は台湾における美術の発展史に大変重要だとし、「『家庭美術館双書』はより多く出されるべきだ。そして一般家庭、学校の図書館へと広めてはじめて皆に台湾の美術史を理解させることができるのだ」と語った。