時代によって変化する世界人口が、歌謡曲の歌詞に登場したり、あるいはタイトルになったりすることは珍しくない。台湾ポップス(流行音楽)の歌詞を振り返ると、世界人口はこの13年間で40億人から70億人に増えていることが分かる。
歌詞に世界人口が登場した台湾ポップスと言えば、1998年にリリースされた徐懐鈺(Yuki Hsu)さんの『怪獣』がその始まりだろう。「有怪獣、有怪獣、有怪獣(=怪獣がいる)」というリズミカルなフレーズは、当時、子どもたちにも大人気となった。この歌にはこんな歌詞が登場する。「地球上明明有40幾億人口、偏偏就是選中我、轟隆轟隆隆、毎天対著我噴火(=地球上には40数億人もいるのに、なんで私にばかりゴーゴーと毎日火を噴くの)」。当時はインターネットがまだあまり普及していなかったからか、あるいは情報の更新に時差があったのだろうか。1998年当時、すでに世界人口は59億人に達していた。
「アジアのダンス・キング」と呼ばれた羅志祥(ルオ・ショウ)さんが2005年にリリースした『嗆司嗆司』で、台湾ポップスはようやく世界人口50億人の時代に突入した。「請多指教、美女、50億人難得遇見了我、你運気還不錯(よろしく、美人さん。50億人の中で僕と出会えたなんて、君はラッキーだよ)」という歌詞だ。しかし2005年当時、すでに世界人口は65億人に達していた。
現実の世界では、世界人口は1999年に60億人に達していた。台湾ポップスも徐々に実際の世界人口に追い付いてきた。女性2人によるアイドルユニットのSweetyが2006年にリリースした『幸福毛毛虫』では、「地球上60幾億的人口、我們卻遇見了(=地球上には60数億人もいるのに、私たちは出会った)」と歌われたし、ロックバンドの強辯楽団(Champion Band)が2009年にリリースした『大声唱』では、「在60億人口的藍色星球上、毎一個人、毎一顆心都是如此的徬徨(=60億の人口を抱えるこの青い星の上で、誰の心もこのようにさまよっている)」と歌われた。
一方で、5人組ロックバンドの五月天(メイデイ)が2007年にリリースした、女性シンガーソングライター、陳綺貞さんとのデュエット『私奔到月球』では、「這星球、天天有50億人在錯過 多幸運、有你一起看星星在争寵・・・(=この星では毎日50億の人たちがすれ違う。僕は幸運なことに、君と一緒に星を見ながら、一番きれいな星を探している)」とあったりする。
2011年になると人気男性アーティストの黄鴻升(エイリアン・ホァン)さんが、世界人口を歌詞ではなく、ついにタイトルに取り入れた。当初のタイトルは『60億分之一』というものだった。その歌詞はこうだ。「若不是上帝睡著、我不可能那麼幸運、能遇見地球上60億分之一的妳(神様が居眠りでもしていなければ、僕がこんなにも幸運に、地球上の60億分の1の君に逢うことはなかっただろう)」。しかしその後、世界人口はついに70億人を突破した。そこで黄鴻升さんはこの歌のタイトルと歌詞を書き換えた。つまり『70億分之一』のバージョンを新たに作り直したのである。この年の10月31日、国連は国連推計による世界人口が70億人を突破したと正式に発表した。
世界人口が70億人を突破したと正式発表された後、台湾ポップスの世界でも「70億」という数字が使われるようになった。楊丞琳(レイニー・ヤン)さんは『點水』で「70億個霊魂都在找同個永恆(70億の魂が皆、同じ永遠を探している)」と歌った。「金曲奨(ゴールデン・メロディー・アワード)」の最優秀標準中国語男性シンガー賞を2度受賞した王力宏(ワン・ リーホン)さんは2015年、自身で作詞作曲した『70億分之一』という歌をリリース。「我不再懐疑、你就是我的70億分之一(=もう疑ったりしない。君こそ僕にとって70億分の1の相手だ)」と、2013年に結婚した妻への愛を歌った。
そして現在、世界人口は76億人に達している。国連が2017年に発表した「世界人口予測2017年改定版」によると、世界人口は2023年に80億人の大台を突破する見通しだという。
さて、5年後の2023年、世界人口が80億人を突破したとき、台湾ポップスの歌詞に最初に「80億」の数字を入れて歌うのは、果たして誰になるだろう。