2025/05/11

Taiwan Today

文化・社会

オランダ統治時代の台湾史に魅せられたオランダ人が歴史小説を執筆

2018/05/01
30数年前に国立台湾師範大学で中国語を学んだオランダ人、Joyce Bergveltさんが、オランダに統治されていた時代の台湾史を描いた小説、『Lord of Formosa』の英語版(写真)が発売された。(Joyce Bergveltさんのフェイスブックより)
30数年前に国立台湾師範大学(台湾北部・台北市)で中国語を学んだオランダ人、Joyce Bergveltさんはオランダに統治されていた時代の台湾史に強く惹かれた。そして4月26日、彼女の執筆した歴史小説、『Lord of Formosa(フォルモサの王)』の英語版が発売された。
 
Joyce Bergveltさんはオランダ生まれ。父親の仕事の関係で日本やイギリスなどで暮らした経験がある。1982年、19歳だった彼女は父について台湾に移り住み、国立台湾師範大学で中国語を学ぶようになった。彼女は1年半しか台湾にいなかったが、両親は1988年まで台湾で暮らしたため、その間、たびたび台湾を訪れたという。そして台湾で生活していた時、Joyce Bergveltさんはオランダがかつて台湾を統治していたことを知り、とても興味を持った。
 
Joyce Bergveltさんはその後、イギリスのダラム大学(University of Durham)で漢学を学習。オランダ統治時代の台湾について研究しようと決意するのに時間はかからなかった。論文の題名は、「台湾での戦い:オランダが台湾を統治した時代と国姓爺によるオランダ人追放」。彼女はチャプターに分けて論文を執筆し、歴史の教授から「まるで優れた小説のようだ」と絶賛された。この評価は彼女に、台湾におけるオランダ統治時代の物語を歴史小説にアレンジする考えをもたらしたが、実際に書き始めたのは20年後で、執筆にはさらに3年半を費やした。
 
同小説は英語で書かれたがオランダの出版社が興味を示したため、まず、Joyce Bergveltさん自身がオランダ語に翻訳したバージョン『Formosa, voorgoed verloren(フォルモサ、永遠に失われた)』
が2015年に出版され、英語版は今年4月26日にようやく日の目を見たのである。
 
Joyce Bergveltさんは中国語版の出版も希望しているが、中国語の能力がかつてほどではなくなったという。「振り返ると、1988年に大学で学んでいた当時はカフカ(Franz Kafka)の著作を中国語に翻訳することも出来たのに」と話す彼女は一歩一歩進んでいく考えで、まずは英語版の市場での反応を見たいとしている。そして、中国版出版の可能性についても、「可能性が皆無だとは誰も言えないでしょう」とあくまで前向きだ。
 
『Lord of Formosa』では、中国人と日本人の血を引く明朝の軍人、鄭成功が清の軍隊に攻撃されて台湾海峡を渡り、さらに9カ月の戦いを経て台湾南部・台南市にあったゼーランディア城(安平古堡)を落とし、オランダ東インド会社が台湾に駐留させていた軍隊を撃破する物語である。小説の概要には、中国と欧州の間で初めて起きた大型の軍事衝突であり、決意と勇気にあふれる一方で裏切りもある物語だとされている。また、強情な最後のオランダ領台湾総督、フレデリック・コイエット(Frederick Coyett)と、聡明ながら感情の起伏が激しい国姓爺、鄭成功の闘志の物語でもあるという。
 
小説には史実に忠実な部分と想像で書かれた部分がある。想像の部分は例えば鄭成功の病気を治療するため派遣されたオランダ人医師のChristian Beyer、そしてオランダを裏切り、鄭成功を助ける通訳の何廷斌などで、これらの登場人物にはJoyce Bergveltさんが創作で肉付けを行っている。
 
Joyce Bergveltさんによれば、オランダ人はフォルモサ(台湾)を統治した歴史を全く知らない。そこで敗れたことを完全に忘れている上、フォルモサが台湾を意味することも多くの人が知らないのだという。しかし、ここ数年、オランダではオランダ東インド会社の歴史に興味が高まっていることに加え、一部の書籍が登場したことで、かつて台湾を統治した歴史が改めて知られつつある。1995年を最後に台湾を訪れていないJoyce Bergveltさんは、もう一度台湾の思い出の地を訪ねたいと願っている。
 
 

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