国立台湾大学医学院附設医院（台湾北部・台北市）は2日、慈善事業への取り組みで知られる俳優の孫越さんが1日夜、敗血症性ショックに伴う呼吸器機能障害で亡くなったことを明らかにした。87歳だった。
蔡英文総統は2日夜、自身のフェイスブックに「孫越さんほど豊かな人生を送った人は数少ない。元軍人であり、よく知られた役者でもあった。金馬奨（ゴールデンホース・アワード）の最優秀主演男優賞を受賞したこともある。彼が台湾社会に残したものは、役者としての素晴らしい作品ばかりではない。彼は慈善事業にも全力で打ち込んでいた。（省略）彼の暖かい声と、慈善事業への貢献は、永遠に私たちの心に生き続けるだろう。さようなら。私たちのよき友、孫越さん」と書き込んだ。
文化部（日本の文部科学省に類似）の鄭麗君部長（＝大臣）は2日、孫越さんの影像産業や慈善事業への貢献について、「私たちに感謝の気持ちを教えてくれた。私たちにとって、大切な手本でもあった。彼が一生かけて残したものは、長く台湾の人々の記憶の中に留まり続けるだろう」と語った。
文化部は2日夜、ニュースリリースも発表し、「孫越さんは40年間にわたり芸能界で活躍しながら、同時に台湾の慈善事業のパイオニアでもあった。自身の影響力を使って、台湾社会における慈善の精神を盛り上げ、多くの人々を慈善事業へと導いた。影像産業の後輩や一般市民が社会に関心を寄せる、その重要な学習の手本となった」と称えた。文化部はまた、総統府に対して孫越さんに褒揚令を出すよう働きかけるとしている。
孫越さんは1949年以来、80作品余りの舞台劇、200作品以上のテレビや映画作品に出演してきた。1969年には映画『揚子江風雲（Storm Over the Yangtse River）』で第7回「金馬奨（ゴールデンホース・アワード）」の「最佳男配角（＝最優秀助演男優賞）」を受賞。悪役で同賞を受賞したのは、台湾映画界はじまって以来のことだった。1983年には映画『搭錯車』で第20回「金馬奨」の「最佳男主角（＝最優秀男優賞）」を、2010年には第47回「金馬奨」の「特別貢献奨」を受賞している。また、コントを中心としたテレビのバラエティ番組「小人物狂想曲」では、第16回「電視金鐘奨（ゴールデンベル・アワード）」の「総芸節目奨（バラエティ番組賞）」も受賞している。
俳優として活躍すると同時に、その影響力を活用して慈善事業にも取り組んできた。タイ北部への支援事業「送炭到泰北」や、献血の「快楽捐血人」、受動喫煙防止の「拒吸二手煙」、臓器提供の「器官捐贈」、エイズ予防の「関懐愛滋」、自殺防止の「自殺防治」、禁煙の「戒煙宣導」などのキャンペーンに参加し、社会福祉サービスに貢献の痕跡を残してきた。台湾における慈善事業の発展と共に生きてきたといっても過言ではない。