国立中正大学(台湾中南部・嘉義県)はこのほど、同大学では初めてとなる「男女共用多機能トイレ」を設置した。男女の性別に基づく二分法ではなく、誰もがより快適に使用することができる多機能を持つ男女共有トイレだ。どんな性別でも安心して入り、使用することができる。多様な性のあり方について考える同大学のサークル「酷斯拉社」は「国際反ホモフォビアの日(IDAHO)」とされる17日、「男女共用多機能トイレ」を通して多様な性について考えるイベントを開催した。
いわゆるLGBTとは、非異性愛者の通称として使われる言葉で、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の各単語の頭文字を組み合わせた表現だ。近年、社会のLGBTに対する関心が高まり、多様な性を受け入れる人々が徐々に増えている。しかし、男女の性別に基づいて分類するトイレは、例えば「からだ」と「こころ」の性が違うトランスジェンダーの人には、「からだ」と「こころ」のどちらの性を選ぶべきか混乱を与え、また他人からの視線も気になるものだ。
「酷斯拉社」の代表はこれについて、「バリアフリーのトイレは、はじめから誰でも使用できるようになっている。その他のトイレも、性別を男女の2種類に分類するのではなく、どんな性でも使用できるものにしなければならない」と指摘している。
中正大学は校内環境の改善を目指し行政ビル西棟の1階に同校としては初めてとなる「男女共用多機能トイレ」を設置した。内部には4つの小便器がある。そのうち1つの両側には手すりが設置されており、視覚障害者や高齢者が使いやすい工夫がなされている。各小便器はパーテションで仕切られており、プライバシーの保護や安全性が保たれている。このほか、和式トイレが3室、洋式トイレが1室、バリアフリーのトイレが1室となっている。
中正大学によると、「男女共用多機能トイレ」は空間の利用により柔軟性を持たせることができ、一般的に見られる女性用トイレの不足により、大行列が生じるという状態を改善することができる。また、単一の性別に限定したトイレにある課題を改善することもできる。例えば高齢者、子ども、車いす利用者など身体機能に障害のある人がトイレを利用する場合、必ずしも同性者が付き添う必要がなくなる。つまり、どんな性別の人でも安心して、自由に使用できるというわけだ。
ちなみに中正大学は今年、性教育やエイズ予防に関する啓蒙活動を担当する高等教育機関の一つに選ばれている。
なお、教育部(日本の文部科学省に類似)は「国際反ホモフォビアの日」に合わせてニュースリリースを出し、各教育機関に対して性的いじめの予防を徹底し、学生たちが異なる性的特性、性的傾向、ジェンダーアイデンティティを持つ人々を受け入れられるよう指導することを呼びかけた。
台湾では2004年より「性別平等教育法(=ジェンダー平等教育法)」が施行され、教育機関は学生たちが異なる性的特性、性的傾向、ジェンダーアイデンティティを持つ人々を理解し、尊重するよう指導すること、それぞれの違いが、その個人の能力及びその個人と他人との関係に影響を与えないことを明確に認知させるよう法律で定められている。
また、台湾北部・台北市教育局は2016年、教育現場でのジェンダーフリーを推進するため、市内にある民生国中(中学)に台湾の中学校としては初めてとなるジェンダーフリートイレを設置している。