サッカーのワールドカップに合わせ、製作費500万台湾元(約1,800万日本円)を費やし、欧州での撮影を敢行したドキュメンタリー映画、『敢夢者:最後一撃 陳昌源(DREAMERS LAST SHOT XAVIER CHEN)』が19日に台湾で公開された。サッカーの中華民国(台湾)代表チーム(チャイニーズ・タイペイ)でプレイした元選手、夏維耶(Xavier Chen=陳昌源)さんの人生の一部を追ったもの。ドキュメンタリーには彼の父親も登場しており、夏維耶さんはこれに驚き、喜んでいる。作品からは夏維耶さんと台湾との心のきずなが垣間見える。彼はまた、この作品で今は亡き祖父への思いを伝えたいとしている。
夏維耶さんの父親は台湾の人で、母親はフランス人。ベルギーのU-19代表選手に選ばれた他、ベルギーのクラブチーム、KVメヘレンや中国大陸のプロサッカーリーグに加盟している北京人和足球倶楽部(所属当時は「貴州人和足球倶楽部」)で活躍した。
映画は、KVメヘレンのコーチ、ベルギーの熱狂的なファン、そして父親の角度からこの「サッカーの貴公子」の人生を改めて紹介している。ただ、夏維耶さんは撮影に戸惑ったこともあったようで、「町で5、6人のカメラを持ったスタッフに囲まれているのはとても恥ずかしいよ」と話している。
また、夏維耶さんの父親もサプライズで出演し、夏維耶さんの子どものころの写真を公開。夏維耶さんが当初、サッカーをやりたがった時、父親は大学の法学部における5年間の学業を全うすることだけを求めたというが、プロのサッカー選手になるとは思ってもみなかったという。夏維耶さんは、「自分の家族は大体内向的で考えを明かさない。父が自分の気持ちを話すことはめったにない中、息子を評価してくれていることに誇りを感じた」と語っている。
夏維耶さんが初めてチャイニーズ・タイペイのユニフォームで戦ったのは2011年。ワールドカップのアジア予選で決勝点となる12ヤードのペナルティーキックを決めた。そして昨年10月10日に行われた対バーレーン戦は夏維耶さんにとっての代表選手引退試合。この試合でも夏維耶さんは勝負のカギとなるアシストで、チャイニーズ・タイペイを勝利に導いた。7年間の代表生活を振り返り、夏維耶さんは、代表選手に選ばれたことで当初思い悩んだことを明かした。しかし最初の試合でピッチに立つと、「(代表チーム参加の)決定は正しかった」と感じたのだという。
夏維耶さんは、「代表選手として最も印象深いのはあの最初の試合だ。当時、自分の決断が正しかったのかどうかはっきりしなかった。でも、試合が始まると、正しい決定だったとわかったんだ」と話す。初めてチャイニーズ・タイペイのユニフォームを着て試合に臨んだ時、自分の力をファンたちに示さなければと大きなプレッシャーを感じていた。しかし、幸いその対マレーシア戦でチームを勝たせることが出来た。夏維耶さんは、「もし仮にあの試合がうまくいっていなかったなら、その後の自分の歩みは全く違っていたかもしれないね」と話す。
代表選手としての7年間、夏維耶さんは様々な起伏を経験したが、「それがサッカーだ」と意に介さない。そして、多くのファンやチームメイトが支えてくれたと感謝する。それは最後の対バーレーン戦に彼が出場した理由の1つでもあり、夏維耶さんは「何かしなければいけないと思った」と語る。引退後、中華民国の代表チームに関わっていくかどうかについて夏維耶さんは、まだ考えていないとしながらも、「自分の学んだことを伝えたい。代表チームにかぎらず、それ以外のチームでも」と含みを持たせている。
ベルギー生まれの夏維耶さんは幼少期に台湾で過ごしたこともある。台湾では祖父と祖母が世話をした。代表チームに加わった大きな理由も祖父と関係がある。夏維耶さんは、「代表チームでプレイした大きな理由は、祖父に会いに行ける時間が増えることだった。このドキュメンタリーは祖父に捧げたい。祖父が大好きで、今も懐かしく思う」と話している。
『敢夢者:最後一撃 陳昌源』オフィシャルトレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=XqTJFLNDIqw