国立屏東科技大学(台湾南部・屏東県)に設置された「国家免疫馬匹畜牧場」が20日に運用を開始した。
衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)疾病管制署は台湾で唯一、抗ヘビ毒血清を生産・供給する機関。2008年に屏東科技大学と協力計画に調印し、抗毒血清を生産するために必要なウマの飼育場「国家免疫馬匹畜牧場」を同大学内に設置し、血清の原料を生産することで一致していた。
20日に行われたオープニングセレモニーに出席した衛生福利部の陳時中部長(=大臣)は、「血清生産用のウマの飼育場はこれまで台中と台南の各地に分散していたが、長年の取り組みの結果、ついに世界レベルの飼育場が屏東に誕生した。これからは、抗毒血清の生産に必要なウマを一か所で、集中的且つ専門的に飼育できるようになった」と述べた。
国のデータによると、台湾では毒蛇にかまれる人が年間1,000人余りに達する。しかし、抗毒血清の生産設備には地域格差があり、また海外からの輸入も容易ではない。台湾の毒蛇に対応できる抗毒血清を作るためには、台湾本土の蛇種から採取した毒液を特殊な方法で薄めたあと、ウマに投与する。ウマの体内で免疫反応が起こり、抗体が生じるのを待って血漿を採取し、これを精製処理して血清を作り出す必要がある。この過程には高度な技術が要求される。現在、世界では米国、フランス、ドイツ、日本など17カ国が抗毒血清の生産能力を持ち、台湾もその中の一つ。
「国家免疫馬匹畜牧場」は欧州連合(EU)の規格に合致したもので、世界レベルの血清生産用のウマの飼育場。屏東科技大学の専門チームのバックアップにより、最良の飼育環境が提供される。今後、この飼育場では最大100頭を飼育し、血清の生産に必要な血漿原料を年間5,000本分、安定して供給できる見通し。
飼育場の建設には1億5,000万台湾元(約5億4,400万日本円)が投じられた。主要な建築物としては厩舎(きゅうしゃ)6棟のほか、屋外の運動場が4つ、ウォーキングマシンが2つなど。ウマが快適な環境で過ごせるよう、国際レベルの馬場管理方式が採用され、専門の飼育員が24時間体制で駐在する。また、それぞれのウマのニーズに合わせた飲食が提供されるほか、ウマ1頭につき馬房1つが用意される。それぞれの馬房には扇風機が設置され、特殊な床材が使用されている。また、特別に招へいした獣医師が随時、ウマのケアを行うことになる。